サプライズをしたい
恭一郎を取り戻した。
そして、月日はすぎ、二月の初旬。
三年生は家庭学習期間に入り、学校には登校していない。
会長である四之宮さんも、家にいるとのことだ。
「佳子も卒業かぁ……」
と、感慨深くそう呟いている。
そらそうだ。幼馴染である会長が卒業するのだ。感慨深くもなるだろう。
そして、その来年は俺らだ。
俺も進路を考えなくちゃいけない時期になった。
とはいっても、俺って将来に対する明確な目標はない。
「なあ、隆たちは将来なにすんの?」
「うーん。拙者はまず進学でござるな。絵の専門学校行くでござる」
「俺は…。まあ、ゲームの専門学校……かな」
「俺は就職するっす!カルビーの工場で求人とってるらしいからそこっすかねえ」
「私は……普通に、働く?」
「ワタシはパティシエールになりマス!お菓子!」
と、みんなは具体的に決まっているようだ。
俺は、どうしよう。将来、なにをしたいか。まだ、決まってないなあ。
「ねえ、久太くん!」
「ん?」
まだ進路を決めていない絶望感に黄昏ていると空が声をかけてくる。
「私、卒業する佳子にサプライズをしたい!」
と言ってきた。
サプライズ。そういえば、会長には空を助けるときに助けてもらったし、俺は協力するかな。
会長とはあまり話したことないけど……。まあ、受けた恩もあるからやるか。
「わかった。俺も手伝うよ」
俺は、そう返事をする。
サプライズなら構わない。何をするか、まず考えよう。
俺の将来のことも考えつつ、何をしようかと。
「何の話でござる?」
「…………?」
「会長が卒業だから何かやりたいよなって」
「オウ!会長とはダレ?」
そうか。ヴァレンタインは会ったことがないのか。
まあ、この学校の会長は有名だから隆たちは会ったことがなくとも耳にしたことはあるだろう。
「この学校の会長でござるよヴァレンタイン氏」
「その子にサプライズ?オウ!楽しソウ!ワタシはヤリマス!」
と、乗っかってきた。
ヴァレンタインは楽しいことが好きらしい。やりたいと俺に詰め寄ってくる。
顔が、近い。
俺は、勢いよく顔を背ける。
「わ、わかった」
俺は、断ることもせず、承諾した。
「やっぱ、記憶に残るようにしたいよね。卒業するんだし」
空が言う。
「なら、卒業式のときハデにやりますカ?」
と、ヴァレンタイン。
ハデにってどう言う風にやるのだろう。爆破装置使って大きく演出するとか?
それは停学ものだよな……。
何をするか考えないと。できるだけ記憶に残り、かつ、驚かれること。
あまり大掛かりだと気づかれる可能性がある。
こういうのって俺もしたことないからわからん。
「お金は私が出すから、どんなのでもいいよ」
と言うけれど、そんなの、やったこともない俺にどうしろと?




