久太の悩みの解消
俺はいったいどうしたいのだろう。
諦めきれないのに、諦めたい。
矛盾した気持ちが俺の中に生まれている。俺はどうしたらいいのかまったくわからない。諦めて違う仲間を見つけるか、恭一郎を仲間にまた引き入れるか。
悩んでいると、その時空から電話がかかってくる。
俺は、数コールした後に電話に出た。
「……もしもし」
『久太くん? 聞こえてる?』
「あ、お、おう。聞こえてるが」
何の用なのだろう。
『その、久太くん。隆くんたちさ、久太くんがいなくて暴走してるから止めてくれないかな? 店の人に迷惑をかけてるんだ』
「暴走……」
『なんでも久太くんなしで恭一郎くんをまた仲間に! って言っててさ』
「……は?」
俺なしで?
俺は考えてみる。あいつらが最近俺の誘いに乗らないのはもしかして俺抜きで問題を解決しようとしているのではないか?
あいつらの思考は単純だから、そう思うとその行動を……。
――バカだ。
俺は気が付くと笑っていた。
「わかった。今行くよ。で、今どこにいるの?」
『ケオの前。早く来て。そして、作戦を練ってあげて』
と、電話を切られた。
なんだ。悩むことなんてなかったじゃないか。あいつらは俺に頼らずに解決しようとしていて、俺はそれをなにか勘違いして崩壊したのだと思っていただけなんだ。
最初から、俺はまちがっていた。それだけか。
悩む時間がバカらしい。
「今の電話何だったんだ?」
百瀬さんがそう聞いてくる。
俺は答えずに立ち上がった。そして、俺は走り出す。
ここからケオは近い。百瀬さんの家からすぐのところだ。俺は家を出てケオまで走る。
と、後ろから妹尾たちもついてきていた。
「なんで急に元気になったんだよ!」
と妹尾は息を切らしながら走っている。
「悩むのがバカだったんだよ。最初から崩壊なんてしてないかったんだ!」
清々しい。
悩み事がなくなり、解放された気分だ。俺の勘違いから生まれた悩み。もともとは存在しなくてもよかった存在。それが、今消え失せたことに、喜びを感じていた。
「で、なんで俺らまでついてきてんだろうな」
「こういうのはノリだろ。誰かが走り出したらあたしらも走り出す!」
「バカだな俺ら」
「高校生はそんなものだろっ! ってペース早い!」
「っていうのは冗談で本当はあたしは西園寺になにかあったのか心配だからな」
「なんで?」
なんで心配なのだろう。
「西園寺だって告白され続けているだろ? で、小鳥遊と交際し始めた。だからそのことを恨む輩もでてくるんじゃないかなーとだな。あたしの推理が出たのだよ」
「なるほど。だが、残念ながら違う」
「違うのか!?」
「ああ。さっきの電話はどちらかというと朗報に近かったぞ」
「……じゃああたしってなんでついてきたんだ」
と、走りながら落ち込んでいた。
「っと。ここか」
ついたのはケオの駐車場。
ここら辺に空達がいるはずなんだが。どこにいるのだろうか。辺りを見渡してもいない。駐車場の横にある茂みの裏にもいない。
どこにいるのだろう。ここはひとつ店員に聞いてみたほうがいいな。
俺らは店内に入る。
「すいません。ここに西園寺 空って人きませんでした?」
店員の一人に聞くと、返答が返ってきた。
「ああ、その人なら店長に連れられて行ったよ。なにやらお友達も連れて」
とのことだった。
な、なにをやらかしてるんだあいつら!?




