俺はまだ選べていない
なぜ、俺はご飯を食べているのだろう。
目の前には様々な料理の数々。俺らはご飯をかっこんでいた。
「美味い!美味いですよ百瀬さん」
「美味いな」
「だろ?あたしの母ちゃん料理うめえんだ!」
「あらー、そんなに褒められると嬉しい、わっ!」
と、百瀬さんの母親は百瀬さんの背中を叩くと、百瀬さんが前に倒れた。
ち、力つよっ!?
む、娘が娘なら母親も母親なのか?人を片手で沈めるとは……。
「だ、大丈夫か?」
「今のは痛かったぜ……。母ちゃんもっと弱くしろよ!」
「今のは百分の一くらいよ?」
今ので百分の一!?
ということは本気出したらどうなるんですか?本気出したらこの家自体壊れたり、とか?
「それより小鳥遊くん、よね?望から話は聞いてるわよー」
「そう、なんですか」
「そんな怖がらなくて大丈夫よー。望以外にさっきのことはしないわ」
あ、安心していいのか?
ぶ、無礼なことしたら本当に沈められそうで怖い。
「他の人にやってたらその人死ぬっての」
「ふふふー」
その笑みが怖いです。
そのおっとりとした笑顔の裏になんだか怖い感情が……。俺はまだ死にたくないぞ。
「小鳥遊くん。うちの娘をよろしくお願いします」
「……はい?」
「娘は昔から友達が出来なかったのよねえ。なんでかしら?」
「…………」
百瀬さんが照れたのか顔を逸らした。
「まあ、友達できてくれてお母さんとしては嬉しいわ。毎日あなたのこと笑顔で語っているのよー」
「ちょ、母ちゃん!?」
「だから、そんな笑顔で語る望を悲しませないでくれるかしら?望はバカだけど力になることはなるわ」
と、言ってくれた。
どうやら俺の悩みを見抜いているぽかった。
俺は、茶碗を置く。
……話そう。
いつの間にか、そう結論づけていた。
「……相談が、ある」
弱々しい声がでた。不安だ。情けないと思われてないだろうか。俺のちっぽけなプライドを捨て、相談したけれど。内心は面倒臭いと思われてないか不安だ。
「…………」
みんな無言なのは静かに聞いてくれるのだろう。
俺は口を開いた。
「なんて言ったらいいのかわからないんだけど……。恭一郎が俺らの元を離れた。きっかけはヴァレンタインが交際し始めたことだ」
「付き合い始めたのか!?」
「俺も空という彼女がいて、隆もヴァレンタインと付き合いはじめ、光も宮古さんという好意を持っている女子がいる。だけど、恭一郎はいなかった。恭一郎はそれが嫌になったらしい。
それからというもの、俺らは関わることが少なくなったよ。隆もヴァレンタインと常に一緒にいるし、光も俺らとは遊ばなくなった。俺は、それが嫌なんだ。俺らは四人……いや、小寄もいれて五人か。五人揃って無敵の非モテ集団なんだ。だから、恭一郎に償いをしたい」
俺は言い切った。
すると、竜太郎が言葉をはなつ。
「なぜ、お前は償いを?お前は悪いことしてないようにみえるが」
「俺が空と付き合った頃から、そういう感情はあったと思うから」
「ふぅん。でも、それってお前は悪くないだろ」
と、竜太郎は言った。
「それは恭一郎の勝手な言い分だろ。それに、その程度で終わるなら所詮はその程度ってことでことだろ」
「そうだけど嫉妬するのは人間として当たり前でしょ。新田は悪くないと俺は思うけどね」
妹尾は負けじと反論する。
「だけど久太と空が付き合って、ヴァレンタインって子と隆が付き合ったから俺は久太の元を離れるってそれは単にわがままだろ。クールそうに見えてあいつはわがままなやつだ」
「俺だってわがままは言うし、ワガママも許容しなきゃ友達じゃねえよ!」
と、二人は議論を交わしていた。
その中に俺は入り込むことは出来ない。さらに議論はヒートアップしていく。
それを止めたのは、百瀬さんだった。
「二人ともやめろ」
二人の頭にゲンコツを落とした。
に、鈍い音したけど大丈夫だろうか。
「こういうのはどうしたいか久太に聞けよ。お前は仲を戻したいのか?それとも、諦めたいのかどっちだよ」
と、俺を見てくる。
俺はもちろん諦めたくはない。けど、問題の解決からは逃げたい。矛盾した気持ちが生まれている。
この気持ちを言葉にするならなんて言えばいいのだろう。
俺はまだ、どちらも選べずにいる。




