恭一郎の崩壊
隆は、転入生である美少女外国人と結ばれた。
その事実が、俺の心の中の闇を蝕んでいく。
なぜ、俺だけ彼女が出来ないんだ。なぜ、俺だけ女子に見向きもされないのか。俺らモテないから非モテ集団と名乗ってきたのに。
今では非モテ集団と名乗ることすら烏滸がましい。
最早名乗れるのは俺一人だ。だから、俺は非モテ集団をやめる。そう心に誓った。
「……はぁ」
自分の部屋で、ただ、寝転がっている。天井に手を伸ばす。
伸ばした俺の手は虚空をつかんだ。
俺は、モテない。
顔がいいとは言われるが、なぜか好きになれないと言われたこともある。
俺はモテないのを自覚してるし、中学まではモテたい、と思っていた。高校に入ってから同じ穴のムジナを見つけ、仲良くなった。そのうちモテないのを気にすることはなくなった。
だが、ある日俺たちを統率する久太が西園寺 空という彼女を作った。相手から告白された。俺もその場面にいたのだが。
その日から、俺の心に何か生まれた。
そして、光は彼女いないといいつつも幼馴染から好意を向けられていることを知る。ちょっと心がズキっと痛んだ。
そして、今日。隆とヴァレンタインが結ばれた。俺は、自分が嫌になった。
なぜ自分には彼女が出来ない、好意を向けられていないんだ。
あいつらに対して劣等感がどんどん露わになっていった。そして、そのことに対する自己嫌悪も生まれた。
裏切られた。ある意味の裏切りだ。
俺らは非モテ集団だ。モテないからこそ名乗れるのに。恋人がいる、好かれてる人がいるのなら非モテ集団とは呼べない。
俺は裏切られたのだ。
勝手に俺は期待した挙句、勝手に失望して俺はあいつらの元を去っていく。
なんて自分勝手なのだろう。
俺はこんな自分が嫌いだ。
こんな自分も、周りも。誰もかも嫌いだ。
「きょうちゃーん!学校はいいのー?」
母さんが、下で叫ぶ。
今日は、あいつらと顔を合わせたくない。
「今日はサボる」
そう告げて、俺は部屋に引きこもった。
諦めたほうが楽なのに、俺は諦めきれずにいる。
この想いを誰か断ち切ってくれ。頼む。俺は苦しいんだ。もう嫌だ。こんな惨めな気持ちは。諦めないで苦しむ俺に救済の手を誰か差し伸べてくれよ。
……俺にそんな人、いるわけねえか。
何日か経った。
俺は、まだ、あいつらに顔向けする勇気を出せずにいる。
話しかけてきても、俺は無視して向かってしまう。
憐れむな、蔑むな。
その感情は俺に向けて欲しくない。哀れみは、理解とは正反対の感情だから。
俺のことを理解して、その上で悲しんでくれ。
「恭一郎サン?」
「……なに」
「元気、出してクダサイ」
「……」
笑顔で慰めようとするヴァレンタイン。
その様子を後ろで久太達が見ていた。
久太。そんな顔で見るなよ。お前は悪くないんだ。お前らに醜い劣等感と嫉妬と羨望と期待を抱いてる俺が悪いんだから。
「……帰る」
俺はカバンを背負い、一人で向かった。
帰り道も、一人で歩く。
きっと久太たちは可愛い彼女と帰るのだろう。妬ましい。羨ましい。
「待つでござる。拙者ら四人で非モテ集団でござろう?」
「……私、いれられてない?」
そんな戯言をいう隆。
俺は鼻で笑った。
「お前らはもう、非モテと名乗る権利はねえよ。モテてるだろうが」
俺はもう、けじめをつける。
「教えてくれよ。モテてるお前らと、モテない俺。一体俺はなにを間違えたんだ?」
「そ、それは……」
「お前らはいいよな。彼女という希望がいて。辛いことがあったら彼女に励ましてもらえてさ。彼女と喧嘩したりもするだろうし、仲直りもすると思う。だけどさ、俺は?俺はなにをしろっていうんだ?」
「お、俺も彼女いないっすよ?」
「お前には宮古という可愛い幼馴染がいるだろ。知ってるか?宮古はお前のことが好きなんだぜ」
俺はそう告げる。
光は黙っていた。やはり、薄々とは気づいていたらしい。
「お前らにはわからねえよ。本当にモテないやつの気持ちが。俺もイケメンに生まれたかったし、能天気に自分の趣味を分かち合える彼女も欲しかったし可愛い幼馴染も欲しかったよ。今まで楽しかった。でも、非モテ集団を名乗るのはお前らはここまでだ。非モテと名乗るのは俺だけ。それじゃあな」
と、俺は去っていく。
隆たちは悲しげな顔で、俺を見ていた。
恭一郎と隆は学校祭でモテないという共通認識があったからこそ爆発はしませんでした。
だけれど、隆に彼女が出来たことが恭一郎にはひどい裏切りとなったようです。
このあとがきは蛇足みたいなものなので飛ばしていただいても大丈夫です。




