ゲームセンターで遊ぼう!②
西園寺さんと遊ぶ次のゲームは意外にもクレーンゲームだった。
でかいぬいぐるみが中央に置かれている。もふもふそうなウサギのぬいぐるみが仲間になりたそうにこちらを見つめていた。
「あれ欲しい!」
どうやら仲間にするみたいです。
「あいよ。とってみるか……」
クレーンゲームはあまり得意ではない。いまいち距離感がつかめないのだ。人間関係と同じで。
だって取ったと思ったら落ちるんだよ? これは会社の陰謀としか思えないし。だからこういうのって絶対落とせる気がしない。
明らかにこれクレーンの力じゃどうしようもなくないか?
っと。その前に。
「ごめん。その前にトイレ行ってくる」
「あ、うん。私ここで待ってるね」
催してきたのでちょいと失礼。
用を足し、手をぶらぶらと自然乾燥させながらでると、異様な光景が見えた。
非モテ集団の姿。そのとっている行動が異様だった。
「なにトイレに向けて土下座してんの?」
なんだろうこいつら。トイレを崇拝してるのか?
「申し訳ございませんでした--!」
「「申し訳ございませんでしたーー!」」
こいつら何してんの!?
「何してんだよお前ら!」
「やはり拙者たちには久太氏がいないとダメなようでござる!」
「俺らやっぱお前が必要なんだよ!」
「もう久太くんなしでは生きられない体になったっす!」
いきなり何言ってんの!? というか何があったんだよ。なんか必死すぎるぞ非モテ集団よ。
「やはり気づいたんでござる……。一人欠けるむなしさを」
「そして失ったとき気づかされるんす……」
「仲間の大切さをな……」
いいこと言ってるけど、なんか心に響かないのは俺だけなのだろうか。
「というわけで今朝は本当にすまん」
「拙者らは反省したでござる。拙者たちは陰ながら久太氏を応援するでござるよ」
「そして二人の恋路の手伝いをするっす! だから許してください!」
こいつら……! やっぱ俺もこいつらと一緒のほうがいい! イケメンリア充である前に非モテ集団の仲間だからな! やっぱ長年一緒にいると愛着がわく。二年ぐらいしか一緒にいないけどね!
「わかった! 許す!」
「おお! 神よ!」
「トイレの神様がいるぞ!」
「トイレにはー、それはそれは綺麗なー……って俺トイレの神様じゃねえし!」
やっぱ楽しいよ。こいつらといるのは楽しい。
西園寺さんと同じくらいに大切なものだ。俺にとっては唯一の友人共といえる。素晴らしき友情。良きかな良きかな……。
「じゃあ俺西園寺さんとこ行ってくるから」
「はいっす!」
俺は去っていった。
「わかってるっすね? 俺らの任務はあの久太くんと西園寺さんの恋路の防衛っす。誰も近づけてはならないっすよ」
「承知しているでござる。イケメンである前にわが友である久太氏のために拙者らが一肌脱ぐとしよう」
「あいつらの恋を妨害する悪い子はいねえかあ!!」
俺が戻ると西園寺さんはクレーンゲームの中をずっと見ていた。
片手にはあのぬいぐるみをもって……。え? もう取ったの? 早くない? というか二体ないですかねえ。気のせいだろうか。
「あ、久太くん遅かったね。遅かったから取っちゃったよ!」
と見せびらかしてくる。
ええ……。ここは彼氏である俺がとってやるとかっこつけて取ってあげるというのが普通なんじゃ。これ俺の見せ場なくね?
「はい。もう一体取ったから久太くんにあげる」
「あ、うん。ありがとう」
普通俺がとるんだよ。それなのになんで取るんですかねえ。
でも西園寺さんからのプレゼントか……。後生大事に保管しておこう。枕元に置いておいて抱きついて寝るかな。もふもふすぎて心地よさそうだ……。
……かわいい。抱きつきたい。抱きつこう。
「あ、抱きつくほどかわいいよね。私も抱きつこう!」
ギューッと。チョークスリーパーを決めるみたいに抱きついた。たとえ方これしかなかったけど許せ。
「ふぅー。あ、もうそろいい時間になるから俺んちいこっか」
携帯の時間では五時半を指していた。