バカで愚かなやつら
本宮の執念を舐めていた。
空のことは諦めたらしいが俺に報復することはまだ諦めていないらしい。
ほんと、愚者は何をするかわからないものだ。
こういう時、漫画ではこういう風に言うだろう。
「あいつは諦めが悪い男だ」と。
本来なら、スポ根漫画的なもので、試合を最後まで諦めないやつに使う前向きな言葉なのだが。あいつに関しては後ろ向きにしか使えない。
「くっそ……」
丁寧なことに一騎打ちをしたいのか、居場所も送ってくれていた。
場所は札幌市を抜けた田舎。ここからではバスを使わないと行けない距離。行っても、二時間はかかる距離。
わざわざそこを選んできたと言うことは、誰かの力を借りるか、バスでくるか選べということだ。
きっと、誰かの力を借りて行った場合、きっと本宮は俺を蔑むのだろう。
それは癪に触る。
そして、バスを使って行くのは俺の金銭面を刺激しようとしているのだろう。
くっそ……。ほんと、性格悪いな……。
人を利用させようとしているのは見え見えなのだ。つまり、裏をかくにはバスで行くのがいいのだが…。
「バイトしてるからってきついよなあ」
財布をみてみるも行きの手段だけで手一杯だった。
……まあ、仕方ない。俺の金より友達だよ。あいつらを救うために行かなければな。
俺はバスを降りる。
ついたのは風吹く町。風車がぐるんぐるん回っていた。
ここの、町にいるという。俺は、隆の携帯に来てやったと告げた。
すると、足音がする。
「来たんだ。一人で」
「ああ。どうせ、空の力を借りるとお前は何か言ってくると思ってな」
「その通りだね。よくわかってるじゃん」
本宮は嗤う。
「僕がここに誘拐したのも理由があるからだよ。まあ、君にあらゆる面でダメージを与えたいと思ってね」
「意図はわかってんだよ。隆たちを返してもらおうか」
「……僕の話は聞こうとしないんだ」
「聞く価値はないだろ」
聞く価値はない。それは当然だった。
今更なんの話を聞けばいいのだろうか。たとえ、話すことが自分の贖罪だと言っても俺は聞いてやらないだろう。
「僕はただ、君と一対一の勝負をしたかっただけなんだけどな」
「殴り合いでか?」
「もちろん。男なら拳で語るってのが、定石でしょ?」
と、構える本宮。
俺も、構えた。これで、最後にする。こういうの、少年漫画の中だけだと思ってたけど、男ってやっぱ拳で言葉を語るらしい。ほんと、バカだよ。本宮も。俺も。




