謹賀新年
パンパンと手を叩き、手を合わせる。
空と仲を深められますように……。
その願いをして俺らは列を出る。
列を出ると、非モテ集団に来ていたことを気付かれた。おーいと手を振り俺を呼ぶので、俺は杏美を引き連れて隆たちの元へ向かった。
「あけましておめでとうでござる」
「ああ。おめっとさん」
「むむ?久太。そっちの女の子は誰だ?浮気か?」
「違えよ。従兄妹の杏美って子」
「小鳥遊 杏美です。よろしくお願い……しま、す」
尻すぼみになっていく杏美。
すると、杏美は俺を引っ張り、小声で耳打ちをして来た。内緒にしたい話?
(その、久太兄さん。真ん中の人誰?)
(誰って…俺の友達の恭一郎だけど)
それがどうかしたのだろうか。
「かっこいい……!」
「は?」
今なんていった?
「おい、なに話してんだ久太」
「久太氏は今日もモテモテでござるな」
「羨ましい限りっすね。俺たちモテないのに」
「……」
「……」
いやいや。いやいやいや。光はモテるだろ。現に宮古さんから好意を持たれてますけど。それでモテてないって言うんですか?
「久太兄さん。私好きになったかも。恋路手伝って」
「あ?あ、おう」
人が恋に落ちるのって案外簡単なんですね。
「恭一郎。なんか杏美が遊びに行きたいらしいから連れてってくれ。俺はちょっと用事あるから」
と、俺は恭一郎に告げる。
恭一郎は「わかった」といって頷くと隆たちが手を挙げた。
「拙者も遊んであげるでござる!」
「俺もっすよ〜!」
「……わたし、も」
と、非モテ集団一同同行しようと……。って、いつから小寄いたの?
だが、今は隆たちは邪魔だ。
俺は隆たちを呼び寄せると、恭一郎に聞こえない声でいう。
「俺の従兄妹どうやら恭一郎に気があるみたいだから二人きりにしてあげてくれ」
「なんと。了解でござる」
「ぐっ。恭一郎にも春が来るんすね」
「……ミッション」
非モテ集団は受け入れてくれたようだ。
そして俺らは恭一郎の方を向く。
「ははは、拙者用事があったんでござった!」
「俺も春から呼び出し受けてたっす!」
「……ふぁいとっ」
「お前ら来れないのか?」
「そうでござる!申し訳ない」
「二人で楽しんでくるっす!それでは、ばいちゃ!」
「……ぐっ」
といって、あいつらは去っていく。
俺も杏美にまた後でと告げ、その場から去る。
そして、雪が積もる道路を歩きつつ、俺が向かったのは空の家。
空は元気しているだろうか。昨日まであんなことがあって精神をやられてないか心配だから来た次第。
会うのはちょっと怖い。考えすぎかもしれないが洗脳されてたり……。
なわけないか。気軽にいこう。
俺は門を開け、扉の前にいくとインターホンを鳴らす。
出迎えてくれたのは空だった。
「久太くん!」
「おう。あけましておめでとさん」
「うん。あけましておめでとう。ささ、上がってって。おせち一緒に食べよ」
「おう」
俺は上がらせてもらう。
そして、大広間にいくとそこには見たことある人がいた。
「ヤッホー。久太ー。あけおめー」
「お、佳。あけましておめでとさん」
佳がソファに座って携帯に触っていた。
「ねえ、久太はお年玉ないの?」
「あるわけないだろ。歳大体同じだし」
「ちぇー」
「佳はお金使いすぎなんだよ。もうちょっと節約したらいいじゃん」
「女はね、美容のためにはいくらでも注ぎ込むの!空姉ちゃんは綺麗だからしなくても良さそうだけど私はするの!」
「そういうもんなのか?」
「さ、さあ。私にも美容はあまりわかんないんだよね」
そうなのか。だとしたら空の可愛さは素で出来たということか。
「ところで急にくるなんて久太どうしたの?久太くんらしくないけど…」
「初詣行って来て空が心配だから来たんだよ。大丈夫か?本宮に何もされてないか?」
「うん。大丈夫。祥太郎はやりすぎな面もあるけど丁重に扱ってくれたからさ…」
「なに?なんかあったの?」
ソファにだらっともたれかかり聞いてくる佳。
俺は話すと長くなるというと「じゃ、いいや」って聞かなくなった。
……あれ?そういや佳が来てるならあいつ来てるんじゃないのか?
「東城は来てないのか?」
「大輝兄ちゃんは部屋で寝てるよ」
「あ、来てるのね」
うーん。あいつ俺のこと目の敵にしてるからなあ。関わるとめんどくさくなりそうだ。
と、その時、またインターホンが鳴る。
空が「はいはーい」とまた走って向かう。俺も心配だからついていくと、ドアを開けた先にいたのは本宮だった。
また嫌な予感しますねえ。
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