憤怒を抑えきれぬ大晦日の夜に
札幌駅で百瀬さんと合流し、事情を話す。
「なるほど……。要するにあたしにボディーガードしてほしいということだな!」
「ああ。そうだ」
百瀬さんに頭を下げる。
百瀬さんはなんだかやる気に満ちたように笑顔を浮かべていたがらその笑顔は笑ってるようには見えない。
そして、その笑顔が笑ってないことを次の一言で知らされる。
「許さねえぞ。あたしのダチに手を出しやがって……」
と、唇をかみしめていた。
「怒りに震えるのもわかる。今日は存分に発揮してくれて構わない」
本宮邸についた。
俺らは車を降り、屋敷を眺める。金にモノを言わせたような造りで、庭も、屋敷もでかい。
俺らは門を開ける。
「ふむ。妙に静かだ」
たしかに。不気味と呼べるほど静かだ。
もう初詣に向かっている時間だからだろうか。何も人の声が聞こえない。
「まあいい。進もう」
俺らはどんどんと進軍していく。
すると、目の前から空き缶が飛んできた。
「おー、おー。坊ちゃんが喧嘩強い相手が来るからーと聞いてたが女子二人、大人一人、男子一人かよ」
「なんだ、簡単な仕事じゃねえか」
と、なぜか不良集団が目の前にいた。
大晦日の日に、こんなとこに不良集団。きっと雇われたのだろう。金を出されて。
ここでまず、一つ目の妨害か。
「とっとと終わらせて金もらおうぜ。こんなやつらなら十分もかからねえだろ」
「……そうだな。十分で充分だ」
百瀬さんがポキポキと指を鳴らす。
そして、不良集団がこちらに駆け出してきた。俺も構えを取る。
だが、それは必要なかった。
百瀬さんは一歩前に出ると、リーダーらしき男を一発殴り吹っ飛ばす。
それに怯んだ不良集団は、一瞬隙を作ってしまった。それが命取りとなってしまう。
横蹴りでなぎ払い、殴って人を吹っ飛ばす。
まるで漫画のように百瀬さんは暴れまわっていた。圧倒的な実力に不良集団は成すすべもなく、その場に倒れこんだのだった。
「ふぅ。仕舞い」
「う、うむ。私も武道の心得は少々持ってるのだが、自信なくなるな」
「喧嘩に関しては右に出るものいねえな……」
強すぎるだろ百瀬さん。
あの不良集団が一瞬で片付いたぞ。なんなのこいつ。天下一武闘会にも出れるんじゃないんだろうか。、
「なにしてんだ?早く行こうぜ。あたしは早く本宮って野郎をぶちのめしてえんだ!」
百瀬さんの叱責で我を取り戻す。
そして俺らはまた、歩き始める。不良集団を退けた後、次に出て来るのはまだわからない。
本宮の性格はとても用心深いという。細心にまで注意しなければ足元をすくわれかねない。本当に、嫌いだよ。
浜田にしろ本宮にしろ大嫌いだ。自分の欲望だけに忠実になりやがって。相手側の心情を察しないただの自己満野郎は俺は大嫌いなんだよ。
この世界には自分だけしかいねえのか!他のやつはいないのと同義なのか!ふざけるな!
自己満が悪いとは言わない。自己満だけに拘るから悪いのだ。
自分も満足することは大切だ。だけど自分以外も満足させねばならない。それができないなら死んだほうがマシだ。
ああ、だんだんイラついてきたぞ。許さない。絶対に。




