瑞穂の奮闘
クリスマスパーティから一週間後。大晦日の日。
未だ、空と本宮の行方は知らずだった。ホテルを探してもなにも見つからず、四之宮家と西園寺家の家の人を総動員して北海道中を探しているらしいが、有力情報は未だない。
もうそろそろ一年も終わるのに。空と一緒に初詣とか行きたかったのに。出来なくなる。
というか、空はどうしてるのかな。本宮の空へだけの優しさに包まれて本宮に惹かれはじめてたりしたらどうしよう。
俺、振られるのかな?嫌だよ、それ。
はは。なにもかも絶望的だ。
すると、電話がかかってくる。
かけてきたのは隆だった。電話にでる。
「……もしもし」
『もしもし久太氏?……その、大丈夫でござるか?瑞穂氏から元気がないと連絡を受けたのでござるが』
「……大丈夫」
『なにがあったのでござるか?クリスマスから元気がないとのことでござったが』
「……なんでもないから大丈夫」
『そ、そうでござるか。ま、まあ、わからないでござるが元気出すでござる!近いうちに見舞い品持っていくでござるから!それでは!』
といって切られた。
……はあ。もう、ダメだ。ダメダメだ……。
最近、兄さんが落ち込んでいる。
兄さんは打たれ弱い。嫌ってる人から何をされても大丈夫なくせに、好きな人や大切な人に嫌なことされると強がったり、落ち込んだりする。
今日は隆さんと電話していたけどその口調には覇気がなかった。
クリスマスデートに行ってくると行ってクリスマスにデートに向かい、帰ってきたら落ち込んでいたとなると。
空さんと何かあったに違いない。フラれた、とか?
きっとフラれたんだな。ここは妹である前に女の子である私が心のケアをしなきゃ!
うーん。まずは兄さんを喜ばそう。兄さんは裸エプロンとか喜ぶかな。
いや、スク水?それとも制服かな?
ああ、兄さんの好み知らない!兄さんエロ本隠してないし!!
兄さんなんでエロ本隠さないんだろう?思春期のやつならエロ本隠すとかテンプレじゃないの?
まあいい。まだ兄さんの好みを知る方法がある。
私は隆さんに電話をかけた。
『もしもし?瑞穂氏?』
「隆さん。急な質問ですが兄さんの好みの女性ってどういう人ですか」
『それは黒髪ロングで胸も大きくて清楚系でござろう』
黒髪ロングで胸も大きくて清楚系……。私と丸反対じゃん!
私は茶髪ショートで胸は厳かで清楚系…。清楚系しかあってないね!清楚だもん。私。
「ありがとうございます。参考にさせていただきますね」
『うむ。何かの役に立てたのなら光栄でござ……ちょ、なにするんでござるか千夏!』
『もしもし瑞穂!おひさ!』
「あ、ちなっちゃん?」
久しぶりのちなっちゃんだ!
『元気?』
「元気だよ」
『ならよかった。ねえ、ちなっちゃん』
「なに?」
『初詣一緒に行こうよ』
「おっけー。待ち合わせ場所とか送っておいてね」
『はいはーい。じゃ、ばいちゃ』
といって電話を切った。
ふう。初詣か。振袖とか着ていくひといるのだろうか。
……ってそうじゃない!今は兄さんだって!
兄さんを励ます!
……でも、どうしたらいいんだ?
兄さんと暮らしてるけど兄さんの好きなもの知らないし……。あまり話そうとしないからなあ。昔から。
というか、元気ないままお爺ちゃん家にいけないよ。正月早々向かうんだから。
とりあえず、なにか作ってあげよ。胃袋を満たしてあげれば少しは楽になれるはず!




