クリスマスには災難がやってくる?④
物語に必要なものは明確な敵の存在である。
ゲームでも魔王というものが人間を蹂躙し魔王に討伐される。だが、魔王がいなかったら勇者としての物語はない。
必要悪というが、まさに必要なのだろう。
誰かの物語の最後には敵がいる。
だが、最後には正義は勝ち、悪は負ける。
今の俺も、勝って正義と名乗れるのだろうか。
まあ、ここで不安になっても仕方がない。俺はやる。空をまた奪い返すのみだ。負け戦だろうがなんだろうが知ったことか。俺は空が好きなんだ。
「祥太郎は必ず空を監禁している。独占欲が強いあいつは、きっと小鳥遊を警戒して、念のため監禁する…そういうことをしているはずだ」
「だとすると、今、空は本宮のいるところにいる可能性が高いと」
「ああ。あいつの家はわかっている。わかっているのだが、多分私たちを警戒して家にはいないだろう」
「だとするとどこに……」
「探す方法は二つある」
二つ?
「一つは、携帯の位置を調べることだ。携帯はスリープモードにしておいた場合、常に最新の情報を更新し続けている。何も使ってないのに携帯の電源が無くなってるのはそのせいだ」
「なるほど。その電波を探索すると?」
「ああ」
「でもそれって携帯の電源切られてたり圏外にいられたらまずくないですか」
「ああ。それが問題だ」
携帯の電源を切られてたら探しようもあるまいに。
「じゃあその次なんですか」
「人を使う古典的な方法だ。労力は使うし確実性もない」
「ああ、人の手で探すんですね」
「ああ。探すのにもムラがあるし時間がかかる。だが、堅実な手段がこれだろうな」
できるだけ時間はかけたくないのだが。
でも、どちらも確実とはいえない。どちらを選ぶ?どちらの方が短時間でできる可能性がある?
まず、遠くへは行ってないだろう。
パーティが終わってまだ30分くらいだ。ここから30分だとせいぜい札幌を出るくらいか?
まあ、なんにせよ。ここから30分は札幌を出るのに精いっぱいだろう。
つまり、携帯は圏外にはいない。
「……調べてみましょう。携帯」
「わかった。そういうのに詳しいのを手配しておくな。そして私たちはまだ調べるところがある」
「どこですか」
「ホテルだ」
ホテルぅ?
会長が言うには廃墟なんて使うわけがないとのことでホテルにいる可能性が高いらしい。
だが、どこのホテルかはわからない。もしかしたらホテルにいないかもしれない。
最初からホテルを探せばいいと言ったが、携帯を探すのは保険とのことだ。
そして今は会長と空の父親、君清さんと一緒に探していた。
「すまない。西園寺のものだが。ここに本宮という者はこなかったか?」
「夜分遅くに訪問して申し訳ない。四之宮だがここに本宮 祥太郎、この写真の男はこなかっただろうか」
ここぞというばかりに家の名前を使う二人。どうやらここらのホテルは四之宮家か西園寺家が運営しているらしい。
お金持ちってこええなあ。
「ここもダメだ」
そういってホテルから出て行く。
これで五件は回った。
俺は車の中に入ると、君清さんに質問をする。
「君清さん。そういや本宮に交際を許可したらしいですがそれはなぜですか」
「いや、私はしていない。ただのでっち上げだ」
なるほど。あれは嘘なのか。
つまり、安心させるために嘘をついたのか?自分のものにするために。
典型的な悪役だ。
「嘘をも利用する。御曹司らしいといえばらしいが、一つのものに執着しすきだな。うちの空に手を出すなんて……。しかも久太くんから略奪する形で。絶対に許さんぞ……」
と、君清さんは怒りを露わにしていた。
会長もその様子を気にせずにずっと静かに座っている。
君清さん。俺もわかります。
俺も結構怒っていますから。
短編を投稿してみました。
「寂しがりの魔神」という題名です。ぜひ読んでみてください。




