ある冬の日のゲームセンター③
このあと、百瀬さんから説明を受けた。
百瀬さん曰く、昔の舎弟とのことだ。
というか、百瀬さんは昔不良だったらしい。スケバン…というほどでもなかったが、髪は金髪に染め、荒れていたとのことだった。
「ということで、こいつはあたしの昔の舎弟」
「よろしくおなしゃす!兄貴がた!」
とりあえず、威勢がいいことで。
元気よく挨拶する彼女。後ろには、なにやら物騒なやつらが待機していた。
なんなんだお前ら……。
「後ろのやつら誰だ?」
「ああ、そいつらは私のグループのメンバーです!知ってますか?私よりたち赤い狼っていうグループで活動してるんです!」
赤い……狼。
聞いたことがある。凶悪な不良集団の総称で、日々喧嘩ばかりを繰り返しているという漫画みたいなやつら。本気でいるとは思ってなかったぞ。
そのリーダーを名乗るやつが、目の前にいる。
「ああ、あのやつらか」
「おい。姉さんに舐めた口聞いてっと…」
仲間の一人が前に出る。
こちらを睨みつけているらしい。ちょっと怖い。だけど、これくらいでは怯むことはなかった。
クラスで毎日殺意ぶつけられてるのに、今更この程度怖くなんてあるかこの野郎。
「おい、後ろのお前。喉乾いたから飲み物買ってこい」
「お、俺っすか?」
「そうだ」
光は飲み物買えと命令されていた。
そして、今度は俺を睨みつけてくる。
「おお、良いお、と、こ」
「…………」
それはそれはたいそうな貧乳の子が、くねくねと体をもじらせていた。
き、きもちわるっ。
「ほら、早く飲み物」
「ねえねえお兄さん。私と遊ばない?」
すり寄ってくる貧乳のキッズ。
なんだか、受け付けたくないです。
「躾がなってねえな……」
百瀬さんはそうため息つくと。
ドンっ!!!
と、壁をぶん殴った。
漫画のように崩れはしなかったものの、音がなりひびく。その音に、少しだけ仲間の人たちは驚いている。
だが、怯んだのは一瞬。
「あ?何してんだおい」
「や、やめろ!その人に喧嘩を売るのは……!」
「何怒ってるんですぅ〜?」
貧乳の子も俺から離れ、喧嘩の構えをしていた。
百瀬さんは、そいつらを睨みつける。
「姉さん!見ててください!姉さんに仇なすものすべてあたしが懲らしめてやります!」
「だからその方に喧嘩は……!」
リーダーらしき子が引き留めても遅かった。
既に聞く耳は持たず殴りかかる。典型的な不良漫画のパターンだ。
その金髪の子は近くにあった椅子を投げつけた。
それを百瀬さんはかわす。それは予想内だったようで一気に距離を詰め、殴りかかった。
だが、それは難なくかわされる。
「死ね」
そう言い放った百瀬さんのパンチが炸裂した。
そのパンチを受け気絶した彼女。
百瀬さんって怖えなあ。
「ははは、申し訳ないです!まさか姉貴の師匠様だとは……!」
と、みんな土下座。
潔いな。
「はあー……。なんなんだったく。あたしは不良やめた身だっつのに。何させんだよ。手間かけさせんな」
「も、申し訳ございません姉貴!」
今思うと不良って上下関係が厳しいのだろうか。
自分より強い奴に従うってお前ら動物かよ。なんなの?ライオンの群れなの?
こう思うと不良って怖い。なにがって。肉食同士で喧嘩することが。
「で、姉貴。そちらの方々は?」
「あ?こいつらはあたしのトモダチだ。小鳥遊に西園寺に桶川だ」
「小鳥遊 久太だ。よろしくな」
「こんにちは。西園寺 空です」
「光っす!光っちでもなんで呼び方はいいっすよ!」
自己紹介を軽く済ませる。
「とりあえず、こいつらに手を出すなよ。だしたらあたしがあんたを潰しにかかるからな」
と、百瀬さんは睨みを効かせる。
だが、女の子は違うように受け取ったようで。
「わかりました!なら私らが小鳥遊兄貴たちの護衛を致しましょう!」
「へ!?」
ご、護衛だとう!?