ある冬の日のゲームセンター②
隆たちは、エアホッケーで遊んでいた。
最初は見てるだけと言っていた竜太郎も遊びに混じっている。竜太郎、隆、妹尾の三人でエアホッケーをしていた。
「必殺!蛇の道!」
蛇の道とは、ただ斜めにうってどこにいくかわからないように打つことである。ただ、これが強い。軌道が読めないのでどこに行くかがわからない。高速で動くために目で追いづらい。
だが、イケメンは違った。
「ほい」
ホッケーの球を難なく打ち返した。
打ちのめされた隆は崩れ落ちる。
「拙者の……無敵の技が……!」
「どけ!俺が仇をとってやる」
マレットを構える。
そして、パックを思い切り打ち出した。高速のパックはゴールめがけて一直線に進む。だが、それも難なくガードされ、カウンターを受けて点数を入れられた。
「なっ!入ると思ったのに!」
「残念だったな」
「くそ!まだやれるでござる!」
「そうだな。ダブルス組んであいつを倒すぞ」
「お?こいよ。ほら」
男のたちの決算が、始まろうとしていた。
結果はもちろん竜太郎の圧勝で終わった。
妹尾と隆が協力しても、為すすべもなく、ただただ点を取られていっていただけだった。
無慈悲な竜太郎の前では、点を取ることすら許されなかったのだ。
「まだまだだな」
「はあ……。き、絹瀬ゾーンに敵うことはなかったでござるか……」
「今の明らかに越前リョーマのほうだよな?手塚のほうじゃねーよな?小波、人違いだぞそれ」
「テニヌよく知らないのでござる」
隆は興味のあるアニメしかとことん追求しないのだ。有名どころもみるが、面白くないと一話で切ったり目を通す程度で終わる。
だから、テニヌのなんとかには興味がなかったりするのだ。
「お前ら何バテてんだ?」
「疲れたのでござる…。拙者はちょっと休憩……」
「俺も…」
二人はその場を離れようとする。
が、竜太郎に肩を掴まれた。
「まだ、戦おうぜ」
と、無慈悲に告げた。
隆たちは楽しんでるのだろうか。
まあ、とりあえず、俺らはパンチングマシンに挑戦です。
まずは、手始めに空がやることになった。
一回やってみたかったらしい。
空はグローブをはめ、起き上がってきたサンドバッグに向かう。
しゅっしゅっと少しだけ練習していた。
「よし」
といって、思い切り振りかぶる。
そして、サンドバッグをぶん殴った。
結果はあれだ。女子の平均よりちょいと高いかなって程度。やはり空はなんでもソツなくこなす。
次は俺がやることにした。
グローブをはめ、思い切り振りかぶる。
「久太ー。次やらしてくれっす」
「あいよ」
俺は、最大限まで振りかぶり、、そして雄叫びをあげながらぶん殴った。
結果はというと。
「まあ、並みの男子よりちょいと高えって程度だな」
とのことです。
泣きたい……。やはり俺は見た目だけしか修正されてないらしい。見た目だけ良くなっても困る。せめて中身も少し進化を!
「ふふん。交代っすね」
グローブを光に手渡した。
そして、光がサンドバッグをぶん殴る。
「おお、すげえ。あたしなみじゃん」
とのことだ。
百瀬さんもこのくらいなの!?だとしたら力強すぎやしませんかあなた!?
とかいううちに、百瀬さんが始めるようだった。
グローブを慣れているかのように手にはめ、目を瞑って精神を統一している。そして、ゆっくり息を吐き出したかと思うと、思い切りぶん殴った。
その桁はあまりにも驚愕に満ちる点数であったのだ。
1400…。
並みの人間が出せる数値を遥かに超えていた。百瀬さん、あんたがナンバーワンだ。
「すげえだろ!」
自慢げに鼻をふんすとならした。
「あ!姉貴!!」
「「「姉貴?」」」
ガラの悪い女の子がこちらに駆け出してくる。
姉貴?姉貴って、誰だ?
「姉貴!お疲れ様です!」
と、百瀬さんの目の前で深く礼をしていた。
……姉貴って、百瀬さん?




