ある冬の日のゲームセンター①
もうすぐ冬休みである。
冬休みの予定は、初めて父さんの実家に行くことになった。瑞穂とかは連れて行ってもらっていたのだが、俺は行ったことがない。
だから、父さんの父さん。つまりお爺ちゃんには会ったことがない。
今から不安に思っているのはおかしいか?
とまあ、悩みを空にぶちまけてみる。
「おかしくないと思うよ。会ったことないお爺ちゃんに会うんだから不安に思うのは当たり前だって!」
とのことだった。
「そうか。あんがとさん」
ちょっとだけ、気分が良くなった。
学校も終わり、雪積もる道を歩いて行く。
「今日は久しぶりに遊ぶっすよ〜!」
「修学旅行以降遊んでなかったからな。思う存分やるか」
「久しぶりにこのメンバーで集まった気がするでござる。まあ、ちょっと多いけれど…」
と、見たのは百瀬さんたちのほう。
百瀬さん、妹尾、竜太郎、猫又さんがいたのだった。
なんか、誘ったらきたんです。はい。
「人数は多いほうが楽しいじゃん」
「うむ。西園寺氏がそういうのなら間違いないでござるな」
隆は頷く。
どうやら一緒に遊んでもいいらしい。
俺ら非モテ集団五人と、百瀬さんたち四人の計九人。ちょっとした大世帯である。
「でもいかんせん人数が多いでござるな…」
「俺は別に見てるだけでも楽しめるから別にいいが」
「タマもみてるだけでいいよ?」
竜太郎と猫又さんは見てるだけでいいという。
「あたしはパンチングマシンだけやりたい!」
百瀬さんはどうやらパンチングマシンをやりたいようだ。
俺もやろうかなあ。こう、自分の力を試したいし。喧嘩強くないけど力は強いって信じたい。
男だしね?空くらいは守れるようにならないと。
「俺は……まあ、お前らと、遊びたい」
「ふむ。そうか。ならバラけるとするでござる!」
「俺は音ゲーやってくるから」
「……わたしも」
と、恭一郎と小寄は音ゲーのほうに向かう。
それに猫又さんは興味津々のようについていった。
「あたしはパンチングマシンのほうにいくぜ!」
「あ、俺もいく」
俺も百瀬さんについていった。
音ゲーでは、小寄、恭一郎、タマがいた。
小寄と恭一郎は手袋をはめている。そして、お互いにらみ合った。
「今日こそは負けねえ」
「…………やれるものならやってみろ」
「お互い険悪にゃ!?」
険悪というわけではないのだが、タマは険悪なムードとして受け取ったようで。
二人の間に入り、仲裁をと考える。
「ま、まあまあ落ち着くにゃ。お互い仲良くいくにゃ!」
行動に移した。
タマは二人が睨み合う視線の中に入る。
恭一郎は何かを言おうとしたが、音楽が始まり、何も言えず、譜面を叩いていた。
小寄は素早く手を動かし、一つもミスがなく進めていく。恭一郎も未だにミスはない。
タマはその二人の様子を見て、驚いていた。そして、興味がそそられるのか恭一郎の手元を覗き込む。
「あっ、ば、バカ!」
恭一郎がタマの頭を叩きそうになり、違うところを叩く。
ミス、一回。
そのせいで少し調子が狂ったのか、ミスが増えていくばかりであった。
そして、結果は散々なことに。小寄は99点という点数に対し、恭一郎は71点と納得のいかない点数に。
恭一郎はタマを睨む。
「ご、ごめんにゃ!き、気になったからつい……!何か奢るから!許して!」
「……はあ。別にいい。気にしてるけどもういい。許す」
恭一郎は怒る気を失せたようで、また、百円を入れていた。




