エンジョイ!修学旅行!④
久太の捜索は難航であった。
空は自分の会社の社員の手を借りる。
社員も血眼になって探していた。これを機に娘に恩でも売っておこうとでも思っているのだろう。それは空は見て見ぬふりをする。そういうのは嫌いなのだが、急遽呼び寄せたのでそれくらいはみのがすことにしたのだろう。
だが、人数をもってしてでも見つからなかった。
最初に有力な手掛かりをつかんだのは意外にも百瀬だった。
百瀬は片っ端から不良共に聞き込みをしていると、一人、久太に似た男を見たという。それで、どこにいるか聞いてみていた。
すると、場所はなんと百瀬たちが宿泊しているホテルの目の前の事務所。そこに連れていかれたという話を聞いた。
「さて、乗り込むぞ」
百瀬は指を鳴らす。
そして、ダッシュで階段を駆け上がる。
どんどんと大きな足音を立てながら進んでドアを開けると、そこには久太がいたのだった。縄で縛られた状態の久太が床に横たわっている。鼻から血を出して鼻が曲がっている浜田の姿も。
「相打ち……?」
とりあえず、百瀬は見つけたと空達に場所を教えて、久太を担ぐ。
「よっこらせっと。さてと。まずはホテルに連れてくか」
……ここは、どこだ。
気が付くと、知らない天井だった。もしかして俺は死んで、新たな人生を歩む? なにそれ。もしかしたらチートがあるかもしれない。
魔法の世界だと嬉しいな。
「あ! 目が覚めたんだね!」
聞き覚えのある声が聞こえる。
ああ、転生はしてませんでした。
「あ、ああ」
起き上がろうとすると、腹が痛くなる。
起き上がろうにも起き上がれない。上体を起こしただけで痛みが伴う。
この部分は浜田に蹴られ続けた箇所だ。服をめくると包帯がまかれており、血が少し滲んでいる。うわっ、こんな怪我してたのか。
「ふう。一時はどうなることかと思ったぜ」
「百瀬ちゃんが見つけてくれたんだよ」
「拙者らも尽力したのでござる。借りは返してもらうでござるよ」
と、隆たち。
というか、人数多くない? 隆たちに竜太郎、宮古さん、百瀬さん、猫又さん、空、妹尾の九人がこの部屋にいた。
おいおい。人口密度高すぎるだろ。
「ごめんな。浜田の暴走止められなくて」
「いや、いいよ。で、浜田はどうなった?」
「警察に拘留された。で、少年院に入るかもしれんとさ」
「そうか」
まあ、誘拐に傷害だもんな。
俺も浜田をぼこぼこにはしたんだが。それはお咎めなしなのだろうか。被害者だから正当防衛で許されたのか? だとしても多分鼻の骨を折るなんてのは過剰だと自分でも思うんだが。
あの時は本気でキレてたから見境なかった気がする。
「久太。大丈夫か」
「大丈夫だ。竜太郎も心配かけてごめんな」
「全くだ。今度何か奢れよ」
「あいよ」
「じゃあ拙者たちも! みんなで飯食いに行くでござる!」
「タマもいく!」
「あたしもいく。肉がいいな、肉」
いや、俺に奢らせる気満々ですね。こりゃ銀行から少し下ろしてこないと足りないんではなかろうか。
「まあ、無事だってことがわかればよかったんだ。俺はもういくぞ。そろそろ朝食だしな」
「もうこんな時間なんだ」
まじすか。
そういや心なしかおなかが空いたような……。でも俺この怪我じゃいけなくない? あの、俺おいていくんですか?
というか、今何日の何時ですかね。
「拙者たちもご飯食べるでござるか。さすがに徹夜はおなかがすくでござる……」
「徹夜?」
「うん。心配だから先生の許可もらって見守ってたんだ。そしたらいつの間にか夜が明けてて……ね」
どうやらみんな徹夜してくれたらしい。なんだか申し訳ないです。
宮古さんなんかうとうとしていて今でも寝そうだ。隆たちは徹夜に慣れているのかぴんぴんしている。ヲタクってすげえな。
「とりあえずご飯食べに行こうか。久太くん立てる?」
「誰か起こしてくれ」
「あたしが起こしてやる」
腕を伸ばし、百瀬さんに引っ張られるが。
「いだだだだだっ!!」
優しく引っ張ってはくれなかった。
乱暴に引っ張られおなかが超痛い。おなかを抱えてうずくまる。腹を押えて痛みを我慢。人間は耐えることができるのだ。
「あ、すまん」
「もうちょっと優しく引っ張ろうか……」
そうです。優しく引っ張ってください。
「でもま、ありがとさん」
だが例は言っておかないとな。親しき中にも礼儀あり。親しくなれてるのかはわからないが。
ゲーム機が壊れかけているので修理に出すことにしました。スプラトゥーンやりすぎたかな?それともスマブラだろうか……




