エンジョイ!修学旅行!③
久太がいなくなったことに一番早く気づいたのは妹尾だった。
妹尾は久太に話しかけようと思うが、辺りを探しても久太の姿がない。それで、空にどこ行ったか聞いてみても知らないとのことだった。
「うーん。とりあえず、連絡してくれませんか西園寺さん」
「うん。ちょっと心配だからね」
空は携帯をいじり、久太に電話をかける。
だが、電話に出なかった。
「うん?携帯どっかに落としたのかな?」
電話を切り、携帯をしまう。
「とりあえず、小鳥遊探すか……。あと、浜田も」
「浜田くんもいないの?」
「はい、さっきから姿が見えないんです」
妹尾たちは人ごみを探す。
別のクラスも見にきているため人数は多い。さらには一般の観光客もいるため、探すのには向いていない。
妹尾が人ごみをかき分けていると腕を掴まれる。
「どこ行くんだ?」
「誰か探してるにゃん?」
百瀬と猫又だった。
どこに行くか気になったのだろう。班員は固まるよう指示はされていないが、百瀬は班員みんなでみたいらしく、妹尾を引き止めたのだ。
「小鳥遊がいない」
「……マジか?」
「ああ。あと、浜田も」
「……うし。じゃ、あたしらも探すぜ」
「タマも手伝うにゃん!」
「助かる」
人手は多い方がいい。
百瀬にも協力を頼んだ。
そして、人ごみを探し、先生にも伝えて探してもらうも久太と浜田は見つからない。
それはそうだろう。二人は別の場所にいるんだから。
見つからず、金閣寺の見学は終わってしまう。
「こんだけ探しても見つかんねえってことは……何かに巻き込まれてんじゃねえか?」
「何かって何だよ」
「あたしだったら攫われたーとか考えるが」
「でも久太くんを攫っても意味ないんじゃないかな」
「…………もしかして」
妹尾は気づく。
浜田が小鳥遊を憎んでいることを。前に話していた。
『僕は小鳥遊が嫌い』と。そして、浜田の性格を考える。あいつはなかなか闇が深いと。
そして、ある考えにたどり着く。
「浜田が小鳥遊を攫った……?」
「浜田くんが?」
「はい。浜田は闇が深くて、小鳥遊のことを嫌っていたと思います。だから、浜田が攫ったのが一番の有力候補かと」
「でも、嫌いだからといってそこまでするのか?」
「嫌いだからこそ消したいと思うんだよ。俺はまあ、嫌いな奴がいたら無視とか決め込むけど、浜田は排除する。そんな奴だ…と思う」
浜田が語っていた。
自分の気にくわないやつは消え去ればいいと。妹尾はそれを冗談交じりで聞いていたが、もし本気だったとしたら。
そう考えると恐怖が湧いてくる。浜田という人間に。
「……だとしたら、今浜田は小鳥遊を…」
「いたぶっている可能性があるな……。浜田は人殺しもやり兼ねない。あいつはリアルで精神がいかれてる」
妹尾は気づいていた。浜田の人間性を。
話して行くうちに無意識に感じていたのだ。冗談交じりで聞いていたとしても心のどこかでは冗談ではないとわかっていたのかもしれない。
「浜田の場所がわかれば小鳥遊の場所もわかるんだがな。あいにく手がかりはない…」
妹尾は目を伏せる。
「いや、あるよ」
そう言ったのは空だった。
空は妹尾を見つめる。
「あるって……どこにあるんだよ」
「いや、作ると言った方が正しいのかな。まあ、ちょっと待ってて」
空は携帯を取り出しどこかに電話をかけ始める。
「ねえ、お父さん。お仕事中ごめんなさい。ちょっと社員さんを借りたいんだけど、いいかな。久太くんが攫われて、久太くんを探したいんだけど……。どこにいるかわからないから手当たり次第探したいんだよね。だから人手が欲しい。うん、社員さんたちには私が貯めていたお小遣いを配っていいから……だめ?
えっ!?いいの!?ありがとう!お父さん大好きっ!じゃ、京都に来てもらって!今すぐに!」
と、電話を切った。
「これでよし。さてと。私たちも手当たり次第探すよ」
「人海戦術にゃね……」
「これで見つかるといいんだがな」
「でも来るのに時間かかるだろ。それに、俺らだけじゃ人数が足りなくないか?」
妹尾が人数を数えてみる。
百瀬、猫又、空、そして自分。四人しかいない。
「足りないね。だから四人くらいに手助けを頼むんだ」
「四人?」
「ははははは!拙者らのことか?西園寺氏」
と現れたのは非モテ集団。
決めポーズを決めていた。
「久太氏がいなくなったと聞いて現れたのは」
「俺たち非モテ集団」
「俺らの出世頭がいなくなったと聞いちゃあ」
「………黙っていられないっ」
空が頼んだのはこの四人である。
これで合計八人。だが、まだ人手は足りていない。
だけれど、これ以上仲がいい人はいなかった。無償で助けてくれる人はいなく、先生を含めた十人で探すことになるかもしれなかった。
が、ここで二人現れた。
「光?なにかな。私に頼みごとって」
「俺もついてこいってなにがあったんだよ」
「いやー、実はっすね」
光が呼んでいたのだ。
宮古と絹瀬を。
「久太がいなくなった?」
「そうっす」
「わ、私たちも探すの手伝ってほしいってことかな?」
「ああ。頼めるっすかね」
「俺は手伝うぞ。久太がいなくなったと聞いたら黙っていられん」
「わ、私も手伝うよ!だ、だからさ、その、光。休日わ、私と…買い物いこっ!」
「いいっすよ。買い物ぐらい。いつでもいいっす。それより今は久太っす!さあ、探すっすよ!」
先生がレンタカーを借り、京都市内を駆け巡る。
聞き込みを行いながら地道に探して行く。もちろん、廃工場とかの場所も聞き出し向かう。
誘拐されて連れていかれるところの定番を探してみるも見つからず。日はくれていった。
「こうがむしゃらに探しても見つかる気がしねえな」
妹尾がそう呟いた。
浜田に電話をかけてみる。繋がらない。
警察にも連絡はしてあるので手当たり次第探しているのだが見つからない。
妹尾はとりあえず、金閣寺の近隣を探し回っていた。
「おらぁ!どけ!邪魔だぁ!」
路地裏にたむろする不良を蹴散らしながら先に進むのは百瀬だ。
百瀬は中学の頃は有名な不良だった。札幌を占める裏番長とかそう呼ばれていた。喧嘩の腕は確かである。
「おい。ここでこういうやつ見なかったか?」
「み、みへはいへふ……」
蹴散らした不良に顔写真を見せる。
不良は気を失った。
「お前らは見てないか?」
「こ、ここは誰も通っていませんよ?」
怯えたように後ずさり、逃げていった。
「ちっ。誰も見てねえのか」
百瀬は頭をかきながらまた、探すのを開始した。
「あそこかにゃ?それともあそこにゃ?」
タマはビルの屋上に登り辺りを見渡す。
視力はどちらとも4.5である。これはマサイ族の劣化版だ。
だからビルの中とか高い場所でじっくりと観察していた。
だが、見当たらない。
京都市内にいることは想像ついていたが、こう見つからないと不安になってくる。
だが、諦めることはなかった。
「あの、屋上寒いので暖かい飲み物どうですか」
「ありがとにゃ」
会社の社員の一人が暖かいココアを持ってきたので、それをぐいっと飲み干し、また捜索を始める。
「早く見つかるといいですね。お友達の方」
「そうですにゃねぇ」
捜索編はまだ続きます。
百瀬さん、つおい