閑話〜ある男子生徒の告白〜
僕たちのクラスの間で話題のカップルがいる。
それは別のクラスのカップルなんだけど、美男美女のカップルらしいんだ。名前は学校一の美少女と名高い西園寺 空。西園寺 空は学校内に非公認のファンクラブがある。厳しい規律のもと動いているらしい。
友達から聞いた規則。
規則その1.西園寺 空に深く干渉しない
規則その2.西園寺 空を困らせない
規則その3.他の男子生徒の告白の意志は尊重させる
規則その4.西園寺 空の意志を第一に尊重
規則その5.西園寺 空に好きな人が出来た場合我々は恋を応援する
とのことだった。
僕はまあ、興味ないし、入るつもりはない。だけど僕のクラスはほぼ全員ファンクラブの会員である。だから、話題は西園寺以外になかった。
「やっぱ西園寺さんのお姿はとても麗しい……!」
「まさに女神と名高いですな」
「そして彼氏と一緒で楽しそうでした!いやはや、彼氏も西園寺様を大事にしてくれるとはな」
「ナンバー2。彼氏の情報は?」
彼氏もたしかイケメンだ。だけど、目立った噂はない。僕も一度だけ廊下ですれ違ったことはあるが、あんな風にかっこいいなら女子たちは噂していてもおかしくはないはずだ。
だけど、これといった噂はない。
うちのクラスの絹瀬は有名なのに、付き合ってる彼氏は無名。噂が好きな女子たちは噂してないということは何か秘密がある?
パッと出のイケメン。なにか裏があるのだろうか。
「彼氏の情報掴んであります。名前は小鳥遊 久太という情報をつかみました」
「小鳥遊 久太ってあいつか!?」
小鳥遊 久太?
あのイケメンが小鳥遊 久太だって?
僕が知ってる情報はボサボサ髪とメガネが特徴の冴えない男子だ。
で、彼は非モテ集団と揶揄されている仲間たちと日々自分の赴くままに学校生活を送っている。僕たちでも悪い方の噂しか聞かないあの集団のトップを張っているあの彼。
そんな男なのだが。イケメン?
「小鳥遊 久太は有名なので知っているでしょう。悪い方でですが」
「あんなボサボサ髪の冴えない陰キャという話を聞いた」
「なんか不潔そうだって私たちも言ってたよ」
「その彼が彼氏ですか?何かの間違いでは」
「いえ、私が調査してみたのですが間違いはなさそうです」
世の中不思議なこともあるものだ。
あの彼と美少女が付き合うとは驚きだ。
いまいちあの陰キャとあのイケメンの顔が似てないように感じるが。まあ、いいだろう。
「ここはひとつ素行調査員を派遣しよう。ミスター輝之。お前の出番だ」
「ぼ、僕?」
「お前は陰が薄いから懐に潜り込みやすいだろ。いけ」
と、半ば強制的に僕が駆り出されることになった。
僕会員じゃないんだけどな……。
修学旅行一日目。
彼はどうやら同室の子と仲良くなれていないらしい。広島平和祈念公園では戦没者を哀れむ心があった。
そして、食事の際に同室の子一人と仲良くなった模様。
あと、西園寺様にあーんをされていた。
……これでよしと。
なんで僕がこんなことを……。はあ。もう嫌だ。クラス変えて欲しい……。僕こういうことしたくないんだけどなあ。断ると怖いんですあの人たち。




