ゴー!修学旅行!④
ホテルの部屋に戻る。
俺は妹尾たちと同じ部屋ということでまあ、気まずい。浜田からは特に敵意を感じている。
感じつつも無視を決め込んでいるのだが。
「さてと。浜田。トランプやろうぜ」
「あ、うん。わかった!」
と、妹尾たちはトランプを始める。
俺はベッドに横になり、持ってきた漫画をただ読んでいた。俺らとこいつは相性悪いし、そもそも相手側が嫌ってきてるから俺は参加しない。というか、誘われてないだろう。
別にいい。敵意むき出しのやつとわざわざ関わろうとは思わねえしな。
「な、なあ、小鳥遊も誘わないか?」
「は?なんで?僕たちだけでやろうよ」
「えーと、仲間はずれはダメだろ」
「えー、でもあいつは西園寺さんを盗ってった男だよ?仲良くする必要ないじゃん」
俺にも聞こえるような声で言ってくる。多分聞かせているのだろうが、それくらいでダメージは負わない。日々の罵詈雑言程度で俺は屈しないわ。言われるのは日常茶飯事だよこの野郎。
「……俺もいいや。なんか、気分じゃなくなった」
「え?やらないの?」
「ああ。俺はやらない。ごめんな」
といって、俺の隣のベッドに寝転がる。
その姿は何かに悩んでいるように見えた。まあ、俺にはかんけいないが。
いや、全然気になんないから。……ごめん。気になるわ。
「何悩んでんだよ。きになるじゃねえか」
「……なんでもない」
「まあ、俺に相談したくないことならいいけど。俺の隣でうじうじ悩まないでくんないか?」
俺の周りには悩む人は少ない。
隆たちは悩まないのだ。みんな自分に素直。だからこそたまに諍いが起きるが、基本的にウマが合う。だからこそ、悩まれるのはなんかじれったい。
「……ごめん」
「いや、いいけどよ」
といって、また無言となる。
居づらいな。この空間。なんだか、ギスギスというのかなんというか。
夕食の時間。
ビュッフェ形式のご飯のようで、好きな料理を皿に取り、席に座る。
俺は空の隣に座り、箸を持った。
「百瀬ちゃん肉ばっかだね……」
「肉美味えだろ?それに今しか食えねえんならたくさん食うまでだ!」
と言ってがっつき始める。
ローストビーフたくさんとってるなあ。まあ、自由だからいいと思うが……。
だが野菜も食えよ……。
「寿司があったにゃ!」
「こっちにはステーキもありましたよ!」
「まじか!取って来ねえと!」
食べ物を口に入れながら行くなよ……。
「……小鳥遊。隣いいか?」
「ん?別にいいけど」
妹尾が俺の隣に座る。
「わっ、このサラダのドレッシング美味しい。青じその感じがする」
「俺ゴマだれにしたんだけど青じそドレッシングも美味いの?」
「うん。爽やかだよ」
「一口いいか?」
「うん」
じゃ、遠慮なく……。ってなんでガードするの?
「きゅ、久太くん!」
「な、なんだ?」
空は箸でサラダを掴む。
そして、手を下に添え、俺に差し出す。
「は、はい。あーん……」
「……あーん」
かぶりつく。
なにこれ、恥ずかしい。超恥ずかしい。
「……!」
妹尾はこちらを見ていた。
またなんかやるのか?
「……小鳥遊。これ、やる」
と差し出したのはステーキ。
え?どういう風の吹き回し?なにが目的ですか?
「あ、ありがとさん」
「今までごめんな。俺が悪かった」
と、妹尾は頭を下げる。
んん?どういうことですかね。なにがあったし。妹尾になにがあった?
何か企んでるのか?
「そんなに睨まないでくれ。俺はなにも企んでねえよ……」
「俺睨んでたつもりないんだけど…」
「に、睨んでたよな西園寺さん?」
「う、うん。睨んでた」
「……すまん」
睨んでたつもりないんですけどね。
「俺はお前らを応援する。まだクラスに敵は多いかもしれないが、頑張ってくれ」
「あ、お、おう」
「ほんと、すまなかった」
改めて深々と頭を下げる。
もしかしてこいついい奴なの?行く前はあんなムカつくことしてきたくせにいい奴なの?
いまいち信じられないが……。まあ、とりあえず、ね。信じることにしよう。
「わかったよ。許すからとりあえず飯を食おう。食事は大事だぞ」
「お、おう」
前を向き食べ始める。
そこからは妹尾は元気よく話し始めた。
「小鳥遊は西園寺さんとどこまでいってるんだ?キスしたのか?」
「なんでそれ必ず聞かれるんだ?」
「いいから答えろよー」
「まだキスもしてない」
「まじか!?」
「マジだよ」
キス……したことないんですわ。
だってあれじゃん。キスしたら入れ替わるかもしれないしもしかしたらテレパシー能力得るかもしれないし!
……魔女はいないか。
ごめんなさい。言い訳です。単純にする勇気がないだけです。
「カップルってキスするもんなんじゃねえの?」
「なにその偏った偏見。俺らは純情だから、な?」
「う、うん」
「そこで自信なくするのやめてくれない?俺まだなにもしてないからね!」
「そ、それも彼氏としてどうかと思うが……」
うるさいです。俺は手を出しません!
たしかに胸もデカイし、顔も可愛いし、あんなことしたら気持ちいいかと思うけど……。
ダメだ!これ以上はダメだ!
「小鳥遊、鼻血でてんぞ?」
「えっ」
「なにかやらしいこと考えてたろ」
「い、いや?」
「……久太くん。目が泳いでるよ?」
「そ、そんなこと!ない……です。嘘です。考えてました……」
だってだってえ!
これでも童貞なんですから!妄想くらい許してくださいよ!思想の自由とかあるじゃないですかあ!!
「許さない。どうやって妹尾を引き込んだ……」
側からみていた男は爪を噛む。
妹尾が、敵に寝返った。それは彼にとって予想していない。
これじゃ、計画は上手くいかないじゃないかと。
憎らしそうな顔で、久太を睨む。
「殺してやる……!小鳥遊 久太……!」
なにか動き出してしまいましたね。
タイトルを修正いたしました。




