ゴー!修学旅行!③
「佳さんのお姉さんなんですか!?」
「かわいー!普段どんな手入れをしたらこんなに可愛くなるんですか!」
現在。俺らは佳のクラスのやつに囲まれていた。
もちろん元凶は空。さっきのあのことで注目されたらしい。先生も困った顔でこちらを見ている。
いや、ほんとにすいません。
「お兄さんかっこいいですね!」
不意にこちらに視線が来る。
「もしかしてこのお姉さんの彼氏さんですか!?」
「彼氏ならどういう経緯で付き合ったのかを詳しく!」
女子って恋バナ好きなの?
「付き合った経緯は、まあ、告白されて?」
「「「「きゃーーー!!!」」」」
女三人寄れば姦しいとよく言うが本当のことらしい。三人どころじゃないが。
「な、なんかごめん。二人とも」
「いや、これは空が悪いし」
「うっ……。なんであのとき私注意しにいったんだろ。自分でも不思議……」
あれだ。きっと修学旅行独自のテンションだよ。
感情には現れてないから行動に現れたんだな。よくあるよくある。で、のちのち冷静になると恥ずかしいやつな。
「おーい、先行ってるからなーー!」
百瀬さんがそう言ってくる。
俺は「おう」と答えてまた、囲まれ続けた。
「あのー、うちの生徒たち見学出来ないのですが」
「うるさいハゲ!」
「私たちの体ジロジロと眺めてるくせに偉そうに言うな!」
「聞いてください。この先生教育だっていっておっぱいとか太ももとか触ってくるんですよ。仕方ないとか不可抗力だとかぬかして!あり得ないですよね!犯罪ですよ!私たちは優しいから言わないであげてますし、頼まれたので黙っていてあげてますがもう我慢できません!警察に言おう!証拠もあるし」
…………なにしてんだよ。
というか、この子たち恐ろしいな。やってる証拠を掴んでるとか……。敵に回したくないでござる。
その教師は顔を青ざめていた。
あ、崩れ落ちた。
解放されたのは数十分後。
俺は百瀬さんに一言連絡を入れ、百瀬さんのとこまで向かう。
どうやら百瀬さんたちは資料館に行っているらしい。俺らもフラフラとした足取りで向かった。
資料館に入り、百瀬さんたちと合流する。
「大変だったな!お前ら!」
笑顔で背中をバンバン叩いてくる。何気に痛い。
「ここもレポート書かなきゃいけないから早く行こっか」
「仰せのままに西園寺さん!」
浜田は元気よく胸に手を当てた。
だが、妹尾はなにもしていない。どうしたのだろうか。いつもなら浜田と同じことをすると思うのだが。
まあ、気にする必要はないか。
俺は気にせず空の隣を歩く。
資料館の中は被爆者の遺品など展示されていた。また、被爆した時の惨状を物語るようなものもある。
俺らはスマホで写真をとりつつ先に進む。
「うわぁ……。かわいそうにゃん……」
展示品を眺めていると猫又さんがそうこぼした。
可哀想なんて言葉は普通は言えないんだよ。他人事のように言うなよ。
俺は可哀想と思っても口にはしない。
こういうのには基本的に同情はしたくない。
「…………」
「…………」
俺らはそれ以降喋らなかった。
戦争、かあ。
きのこたけのこ戦争ならまだ穏やかでいいんだけどな……。
ちなみに俺はきのこ派です。




