殺し合いドッジボール
本日の体育は男女混合ドッジボールをするらしい。
体育の先生が休みで、担任が他の協議考えるのも面倒だったらしくドッジボールとなった。もちろん男女の不満はたらたらである。俺も正直のところやりたくないというのが本心だ。
だがしかし。
「一緒のチームになれるといいね。久太くん」
俺の彼女が俺に抱きついてくるのである。
その様子に辺りは騒然とした。
「なんで小鳥遊に抱きついてるんですか西園寺さん!」
「ダメですよ! そんな得体のしれないイケメンに抱きついちゃ!」
うるさい負け犬。
俺が白けた目で見ていると、西園寺さんが口を開いた。
「ダメなの? 私久太くんとお付き合いをさせてもらってるんだけど」
と、とんでもない爆弾投下しやがったーーーーー!!
や、やばいよ。これ男子全員敵に回したよ。あのおとなしそうな男子も「なに? みんなの西園寺さんと付き合ってる? 許すまじ。殺す」と言わんばかりに投げる動作してるよ。他のみんなもウォーミングアップをガチでしてるんですけど。
――俺、死なないよね?
「あれ? 男子のみんなやる気満々だね」
「そうですね……。殺る気満々ですね……」
やばい。超やばい。向かうところ敵しかいない。
こういうのをなんというのだろうか。四面楚歌?
そして、ドッジボールが始まる。
俺は見事西園寺さんと同じチームになれたのはいい。だけどね?
「おっと手が滑った!」
「あぶなっ!」
敵じゃなく味方も俺にボールを投げる。ドッジボールのルールわかってないみたいだ。こんな有名なボール遊びを知らないとはねえ。
ってそんなに悠長にしてられないよ。
「ボールひーろった! うーん。この角度かな?」
ボールを拾った西園寺さんは投球フォームに入る。
どうやら今は角度を決めているらしい。砲台かよ。あんた。
「よし、ロックオン! とりゃあ!」
思いっきりボールが射出される。
勢いよく飛んでいったボールは女子生徒の足に当たり、アウトになった。
「よっしゃ! どう? 久太くん。すごいっしょ?」
「すごいね……」
できれば男子当ててほしかったな! と心の中で思っておく。
ボールは俺の味方の外野にわたった。
「ほらよ」
「せんきゅ」
なんで敵にパスしたあああああ! ドッジボールでそれダメだから! 敵にパスしちゃダメだって!
で、その狙いはもちろん俺。
俺に向かって剛速球が飛んでくる。俺はギリギリのところで躱した。
「ちっ」
「ちっ。じゃねえよ! 今顔狙ったよな!?」
「おーい。久太氏ー」
「は? なんだよ」
「死ねやごらあ!!」
「はあああああ!?」
相手の外野と内野のキャッチボールが続く。もちろん全部狙いは俺。ギリギリ躱し続けているも体力の限界がそろそろだ。
あと、なんでクラスのやつと自然に打ち解けてんだよ非モテ集団。お前らいつの間に仲良くなったし。
「久太くん! 危ない!」
「へ?」
俺の顔面目掛けてくるボール。
俺の目の前に西園寺さんが飛び出してきた。そして、西園寺さんにボールが当たる。顔面にぶつかって血を出していた。もちろん鼻血だが。
「西園寺さん!」
「いっつぅー…。なんで久太くんばかり狙われるんだろうね」
「…………」
それはあなたが爆弾を投下したからですが。
で、西園寺さんにあてた男子は恐怖に包まれていた。がくがくと震え、今にも逃げ出しそうな感じだった。
「ち、違う……。僕は小鳥遊にあてようとしたんだ。でも、西園寺さんが……違うんだああああああ!!}
あ、逃げた。
その男の子は体育の時間。一切戻ってこなかった。どんだけ人気あるんだよ。傷一つ付けたら処罰みたいな対象になってんじゃねえか西園寺さん。
……あれ? だとしたら俺も危なくね?
……。まあ、いいか。とりあえず、周りをちゃんと見よう。じゃないと殺される……。西園寺さんのファンたちに殺される……。
人って怖い。美少女一人でこんなに豹変するものなのか……。
ドッジボールで黄金の回転エネルギーつかってなげましょうか(わかる人にはわかるネタ)