班でのお買い物①
修学旅行も間近に迫った土曜日。
俺らの班はみんなで買い物にきていた。修学旅行で必要なものをみんなで買おうという話に。
俺はいち早くきて待っていた。いや、彼女待たせると悪いからさ……。
こういう時って大型ショッピングモールって便利だよね。
「ふふん。タマ登場!」
意外にも最初に来たのは猫又さんだった。
「ちぃーす」
「おっはよー」
続いて百瀬さん、空がくる。
残りは男子なんだが……。待ち合わせ時間の十分前になってもこない。
そして、時間が来た。
「あいつらおっせえなあ。もう先行っちまおうぜ」
「待つの退屈ぅ……」
「連絡入れておくから先行こっか」
俺らは先行くことにした。
お前ら空が好きなくせに待ち合わせに遅れるってどういうことだよ。最低なやつだな。もともとお前らが提案したんだろうが。
俺らは中に入っていく。
休日とあって人もごった返していた。
「えーと、まずは何買うんだ?」
「修学旅行に必要なものっていえば寝巻きとかだよにゃあ」
「で、USJの時は私服でいいんだったよな」
「じゃあまず服だな。というか着替えしかなくないか?洗面道具とか中学校のあるだろ?」
「だね。あとは娯楽品とかかな」
「しゃあ!あたしトランプ買ってく!」
修学旅行で持っていくものってあまり想像できないな。とりあえず着替えさえ持っていけばあといくね?
俺はゲームと漫画は持っていくつもりだが。
「じゃ、服でもみよっか」
「おう。行ってら」
「え?女子だけで選ぶにゃん?せっかくだから久太も行こう!」
「いや、俺女子の服選ばないし、自分のも選びたいっつうか」
「うん。そうだね。選んだ服は修学旅行のお楽しみにしようよ」
「残念にゃ…」
「ほら、なにしてんだ。行くぞ〜」
女子と男子(男子は俺一人)のため、多分俺の方が早く終わるかな。
着られればいいって感じだし。
「俺、終わったら書店にいると思うから。それじゃあな」
俺はそう言い残し、服屋へと向かう。
案の定、俺が早く終わった。
そして、書店にいると息を切らした浜田と妹尾がやってくる。
「はあ…。さ、西園寺さんは!?」
「はあ……疲れたあ。西園寺さんはどこ?」
「浜田に妹尾。空ならまだ服選んでるぞ。あと、待ち合わせに遅れんな」
「まだか…」
「疲れたあ……。体力ない…」
話聞いてねえよこいつら。
もういい。無視して本でも探していよう。なんか面白い漫画とかラノベあるか?
「待てよ。なんで無視すんだ」
「はあ…はあ……」
肩を掴まれる。
なんで無視するかって決まってるだろうが。お前らは俺の話を聞かないから俺も話を聞かないだけだ。
俺は答える気もないので振りほどいて、また本を探し始める。
妹尾は何度も摑みかかろうとしてくる。それをかわしつつ探していた。
こう何度も何度も突っかかってくると本当にうざい。
温厚な俺ですらこんなイラつくのだ。
なんだよ遅れてきて偉そうに。
「無視すんじゃねえよ!」
「お前も俺のこと無視しているくせに。自分は無視すんなってか。虫のいい話だな。無視するだけに」
「大事な要件だったらどうすんだよ。それでも無視すんのか?」
「そっくりそのまま返すし、大事な要件じゃないことは知ってる」
図星だったようで何もいえなくなっていた。
そして、掴みかかってくることもやめ、俺は何も言わずその場を離れる。
ここまでイラついたのは父さん以来だ。
父さんを相手取るのと同じって……。俺って男運ないのか。恵まれねえなあ。
「お?久太じゃねえか」
「竜太郎?なにしてんの?」
俺が先に進むとそこには竜太郎がいた。
片手には何か参考書を持っていた。
「参考書眺めてただけだ。久太は?」
「空たちと修学旅行前の買い物。まあ、服しか買ってないけど」
「そうか。もうちょいだもんな」
「竜太郎は準備してんの?」
「俺もぼちぼちやってる」
そういう竜太郎は少し嬉しそうな笑みを浮かべる。
楽しみなんだな。
「おや、ここで見慣れた顔と出会うとは」
後ろから声が聞こえる。
振り向くと会長がいた。
「奇遇だな、副委員長」
「会長。というか、学校祭も終わったのにまだ副委員長呼びですか」
「慣れてしまってな。それはそうとそちらの人と二人か?」
「いえ、竜太郎とはここで偶然出会っただけで今日は空たちときてますよ」
「空も来てるのか」
会長はどこか楽しそうだなあ。
会長にもお土産買ってこうかな。でも何がいいんだ?
「会長。お土産何がいいですか」
「お土産?そうか、そういやもうすぐ修学旅行だったな。行き先は京都か……。なら大阪の蓬莱の豚まんを頼む。私、あれが好きなんだよ」
蓬莱の豚まん。
おーけー。大阪ね。
「わかりました」
「おま、会長と知り合いなのか」
「ふむ。初めましてだな。私は会長の四之宮 佳子だ。君は…絹瀬 竜太郎か」
「俺のこと知ってるんですか」
「有名だからな」
まあ、校内で有名なら会長の耳にも入りますよね。
「そりゃどうもです」
「ふむ。確かにかっこいいな。噂通りだ」
「あ、ありがとうございます」
会長を目の前に竜太郎は萎縮している。
なんでこんな萎縮してるんだろうか。漫画のように生徒会はでかい権力持ってないよ?
「おーい、久太くーん。終わったよー」
と、空が笑顔で駆け寄って来た。
ウキウキとした気分で紙袋を手にしていた。
「っと、佳子。邪魔した?」
「いや、偶然出会ったから話していただけだ。こちらこそ彼氏借りててすまないな」
「ううん。佳子は取らないって確信してるから、ね。ね?」
笑顔で威圧していた。なるほど、牽制か。
「わかってる。だからその怖い笑顔やめろ…」
「うん。、よかった」
その黒い笑顔で見つめ続けていた。
怖いよ。




