修学旅行の計画
俺は旅行の計画とか出かけるときの計画は嬉々として綿密に練る。
どこに行きたいとか、何を食べたいかとかあらかじめ調べておいて、一人でそれを楽しむ。それか隆たちと一緒に楽しむのが俺の旅行スタイルだ。
要するに俺は計画は楽しく練って楽しく実行するんだよ。
でもね、今全然楽しくないです。
「西園寺さんは京都どこいきたい?」
「僕、龍安寺行きたいと思うんだけどいいかな」
妹尾と浜田が空に今がチャンスといわんばかりに声をかけていた。
俺が声かけようとしても、遮られて結局話せないまま終わる。ちょっとそれでいまムカついてきていた。俺の彼女に話しかける暇すら与えない。お前らは人の恋路の邪魔をして楽しいのかよ。
そんな俺のイラつきが顔に出てたのか、百瀬さんが心配そうに顔を覗き込んできた。
「イラついてんのか?」
「……いや」
「ま、イラつくわ。ちょっとあたしでもムカついてきた」
「……やっぱりか」
「ああ。無性に殴りてえ」
だよな。
ここぞといわんばかりに空に話しかけまくって俺のストレスがマッハだ。俺の心にどんどんイラつきが溜まっていく。
こいつらうざい。殺したい。
「あたし止めてきてやる」
「……穏便にな」
「わかってる」
百瀬さんが妹尾たちに近づいて行って、怒鳴り散らしていた。
その怒声にクラスの奴らの注目が集まっている。妹尾たちはというと、びくびくと体を震わせていた。そして、何も言わずに空から離れていった。
「西園寺。お前の彼氏がイラついてたから止めてやった。困ったらあたしに言えよ。きつく言ってやるから」
「あ、あり、がと」
「どういたしまして」
百瀬はにかっと笑う。
ちょっとかっこいいと思ってしまった。男より男っぽいぞ。
「久太くん久太くん」
空はこちらに手招きをしていた。
「安心してね。私は久太くんから乗り換えるつもりはないから」
いや、心配してるのはそこじゃなくてだな。
自主研修の周るところも大方決まった。
各班一つだけは神社や寺、城を見に行かねばならない。大阪にも足を延ばしていいらしいから大阪城を見に行くことになった。
大坂夏の陣。真田幸村が真田丸に立てこもって徳川軍を苦しめたとかそういう話なかったっけ。それって冬の陣だったか? どっちだったか忘れたが、歴史には所縁がある。歴史を好きになりたい者としていくべきだと思ってだな。
「大阪城といえば大坂の陣だよね」
「豊臣秀吉が建てたんだよな」
「そう。で、大坂の陣で真田丸ができたんだよ。冬の陣で」
あ、冬でしたか。
「真田信繁が徳川の勢力に対抗するために建てた城。兵力で劣る真田軍が何万もの軍勢を引き連れる徳川軍を苦しめたとか」
「ほんと幸村かっけえよ」
というか信繁のほうでいうんですね。
「のぶ……だれだ?」
「信繁ってだれにゃん?」
百瀬さんたちも話を聞いていたらしく、信繁が誰かわかっていないようだ。
「真田幸村だよ。名前だけは聞いたことあるだろ。それに、真田丸って知ってるだろ。大河ドラマでやったし」
「ああ、それならわかる」
まあ、そうだろうな。真田幸村って結構有名な気がする。伊達政宗も有名だがあれは戦国無双でレッツパーリィしてたからだろう。
「京都はともかく大阪は楽しみだなあ」
俺の楽しみは大阪です。
そのころ京都では。
「ねえ、夏菜子ちゃん。久太たち修学旅行でこっち来るらしいよ」
「ほんとですか?」
「うん。こりゃもてなさなきゃね。ホテルとか聞きだしておくからサプライズで行こ?」
「はいっ!」
そのような計画を練られていた。
その計画を練る佳は笑っていた。




