文化祭が始まりました!⑥
短いかもしれません。
飯も食い終わる。
っと。そろそろ時間か。
「じゃ、俺ちょっと用事あるから」
「何の用だ?」
「バンド」
非モテ集団がでるっつってるから。
その時、俺の携帯に電話が入った。俺はすぐ着信に出る。相手は隆だった。
『久太氏。まずいでござる。恭一郎氏が熱を出して倒れたでござる!』
「まじか!」
やばくね? エレキでしょあいつ。
俺たちがやる曲ってエレキいないとダメなんだって。バンドにエレキは一人いないとダメなんだって。雰囲気が違うから!
まずいぞ。恭一郎が熱を出して倒れた。他に代役は……。
ん? 竜太郎はできるんじゃ?
「竜太郎。お前エレキできる?」
「ベースとかエレキは中学の時に少し齧ったからできると思うが」
「わかった。頼みがあるんだが」
「バンドに何かあったのか?」
「恭一郎が熱を出して倒れたんだよ。だから人員不足。助けてくれると嬉しい」
「あいよ。じゃ、やるわ」
俺はまた耳に当てる。
『相手見つかったでござるか!』
「あ、ああ。でさ、隆。ひとついいか?」
『何でござる?』
「今気づいたんだが、俺らのバンド、ベースいなくね?」
『……あ』
忘れてたのかよ! ドラムは小寄、なぜかギターの隆、エレキの恭一郎、ボーカルの俺。ベースはいないのでござる。
今からベースを探すとしてもなあ。
「話は聞かせてもらったぜ」
「誰だ?」
「あたしベースできるからやってやんよ。面白そうだしな」
「百瀬さん。さんきゅ」
「ベースはあるか?」
「ないから借りる」
そもそもベースを忘れていたからあるわけがない。
たしか先生方もバンドするはずだし、先生方から借りよう。どうせもう終わってるし。
『百瀬氏が手伝ってくれるとは。助かるでござる』
「いいってことよ。あたしもバンドには興味あったんだ」
そうなのか。
「あたしとやりたいっつうやついねえし、まあ、いいかと思ってたんだよ。いやー、ありがてえ。あたしのベースをとくとみせてやる!」
と意気込んでいた。ちょっと頼もしい。
そして、舞台裏。
俺らは順番を待っていた。
「おお、懐かしい。よく父さんの触っていたもんだ。この感覚がたまらん」
「あたしは将来バンドマン? になれるかもしれないとじいちゃんから言われていたからな!」
ああ、そう。
俺は咳払いをして喉の調子を整える。声もでるし、ガラガラボイスではない。
大丈夫だ。俺らは恭一郎の魂を受け継ぐ。あいつが最期に見せた恭一郎魂。つまり人間の魂。俺は無駄にはしないぜ!
「そういや、バンド名は? 毎年バンド名がまず話題になるが」
そうだな。去年も話題になってたはず。バンド名かっけえとかクラスの奴が話していた。
もちろん決めてある。
「We are Not popular(モテないやつら)。その頭文字をとってWANPだ」
「……恥ずかしくなってきたかも」
「いまさら何を言うか。俺らは非モテ集団だぞ? モテないのはあたりまえだろうが」
伊達に非モテ集団と名のついてるわけじゃない。
「ふっふっふ。でも俺は春とイイ感じになってるっすよ。ただ、多分幼馴染だからだと思うっすけど……」
で、相変わらず気づいてないのね。
「おお、春はアタックし始めたか」
「知ってたのか?」
「俺よく恋愛相談に乗ってたしな」
「ふぅん。あ、もうそろそろだ」
俺らの前のグループが舞台裏に戻ってきた。
次は俺らの番だ。俺らのバンド。それが、今日、披露される。
こうしてこいつらと学校のために何かをするのは実際初めてだ。俺にとっても、友達とこういう風にやるのは初めてだったりする。
応援してくれた西園寺さんのためにも頑張ろう。うん。俺頑張るよ。
モテないやつら。なかなか直球ですね。




