文化祭が始まりました!④
クイズの迷路を突破して次に向かったのは俺らのクラスの発表。
あとで当番がくるのだが、売れ行きがどうとか知りたいらしい。まあ、俺も行こうとは思っていたので西園寺さんとは思想が同じらしい。ちょっとうれしい。
「いらっしゃいませー。って小鳥遊に西園寺じゃねえか。どった?」
「百瀬ちゃん。いや、様子を見に来ただけだよ」
「あ、そうなのか? まあ、売り上げはぼちぼちだぜ」
百瀬っていうんだ。このガングロ女子は。
胸がでかいという印象しかない。
「そういやさっきまで小鳥遊といつもつるんでるやつらがブルーな雰囲気でいたがなにがあった?」
「隆と恭一郎と光?」
「二人だけだったぞ」
「じゃあ、隆と恭一郎かなあ」
光は多分今宮古さんといい雰囲気になってると思うし、隆と恭一郎しかいないと思うが。
「小波くんと新田くんだよね? なにがあったのかな」
「さあ?」
あいつらがそこまでブルーになるっていうのは珍しい。
まあ、おおよそ光がモテて危機感を持ち始めたのだろう。というか、なんで自分らはモテないんだと思ってるんじゃないかな。ただの推測だが。
「まあ、あたしが慰めといてやったぜ! モンブランを奢ってやった! だけどあいつら『俺は女子からの施しはうけねえ。勘違いしちまうから金払う』だの『うーむ。その気持ちだけ受け取るでござるよ。対価は得るべきでござる』とかぬかしていたな。まあ、問答無用で奢ったが」
笑顔でそう語る百瀬さん。なんていうか、男より男っぽいな。
胸の大きさのせいでぴちぴちの制服を着ている。なんていうか、ね。やっぱでかい。何を食べたらそんな風に育つんでしょう。
っと。西園寺さんがジト目でこちらを見ている。やめなければ。
「こほん。ま、席案内してくれ」
「あいさー。ほら、こっちだ」
案内され席に座る。
本棚には俺が持ち込んだマンガ以外にも女子が持ち込んだ少女漫画がある。俺少女漫画読んだことないが面白いのか?
俺は立ち上がり少女漫画を少しだけ読んでみることにした。
「何その漫画。”太陽の花と月の草”?」
「少女漫画だ。こういうの読んだことないから読んでみようかと」
「そうなの? というか、私も読んだことないから一緒に読みたい」
「じゃあ、一緒に読む?」
「うん。そうする」
西園寺さんは俺の隣に来て、俺に寄り添う。
か、顔が近い。西園寺さんの匂いが鼻腔をくすぐる。いい匂い……。女子っていいにおいするよね。いや、ヘンな意味じゃなくて。
俺はバクバクいっている心臓をなんとか抑えながらページをめくる。
やばい。やっぱ可愛い。近くでこうして二人でいると、なんだか幸せです。恋人補正すごい。やっぱ可愛いよ。学校一といわれるだけある。
「このヒロインいじめられてる」
「ありきたりだな」
これは悪役令嬢ものか。悪役令嬢にいじめられてるところをヒーローが助けるよくあるやつだ。
特待生とかそういうものがあるやつだな。そういうのは疎まれるんだよ。天才とかも実際疎まれる。羨ましいなあって思われるものさ。
まあ、この設定はありきたりすぎるんだが。
某サイトでは悪役令嬢転生というものがあるけど、大体最後ひどい目に合うからそれを回避しようとするだけ。まあ、面白いんだけどさ。
「水かけられるとか、やることえげつないよね」
「まあ、そうだな」
現実でやるといじめ行為だ。
「私だったらこの子を応援するかな。こんな女の子に負けないでって」
「俺もそうするな」
まあ、悪役令嬢にはだいたい同情できないからね。
「アツアツのところ悪ぃんだが、注文はねえのか?」
「あ、すまん。えっと、俺はシフォンケーキ頼む」
「私もそれで。飲み物はコーヒーでいいかな」
「俺カフェオレ」
「あいよ。かしこまりっ」
百瀬さんは去っていった。
気が付くと少女漫画に読みふけっていた。
そして、俺が次の担当となる。西園寺さんは俺の後だ。
「さ、仕事しようぜ小鳥遊」
「あいよ」
俺は制服に着替え、メモをぽっけにいれ、おぼんを片手にフロアに出る。
「そうだ小鳥遊」
「なんだ?」
「修学旅行一緒に回るやついねえなら一緒に回ろうぜ。どうせあの三人と西園寺いれるんだろ?」
「いいけど気が早くないか?」
「この学校祭終わったら決めるんだろ。それに早く予約入れとかねえととられそうだしな」
ああ、そうか。
二年生のメインイベントといえば修学旅行か。三年になったら進路のことを考えなくっちゃいけないから二年生の時に行くらしいが。
そうか。もうそんな時期か。
「ま、決まりだな。約束破るなよ」
「あいよ」
破らねえよ。俺は約束はできるだけ守る男ですから。




