文化祭が始まりました!③
「あ、ここ行きたいな」
西園寺さんと回っていると、西園寺さんが興味を示したものがあった。
グラウンドで三年生全クラスが一致団結して作り上げた学年発表の舞台。謎解きクイズ迷宮という迷路をさ迷いながら謎を解いていくらしい。
結構本気で作りこんだと会長も絶賛していたほどで、俺も行きたいなとは思ってた。
「クイズか。俺も好きなんだよ。頭使うの」
とりあえず行列に並ぶ。
どうやら気になる人がたくさんいるらしくまだ開始から数分だが結構並んでいた。
広大なグラウンド全部を使ってやっている。入り口は三つで簡単、中級、上級とクラスが分かれている。俺らはもちろん上級に並んだ。上級は人が少ないから安心でござる。
「とりあえず、携帯は没収されるらしいな。答えを調べられないようにするのは当然か」
「そうだろうね。携帯つかって解いたんじゃ面白くないもんね」
俺らはあらかじめ形態を取り出しておく。
俺らの番がきて、受付の人に携帯を手渡した。
「おや? 副委員長に空じゃないか。君たちも参戦するのか?」
「あ、会長。奇遇ですね」
「私の学年だから奇遇も何もいるのが当たり前だろう。それより上級はとても難しい問題を用意したぞ。頭のひらめきだけじゃなく知識も問われるようになる。覚悟しておけよ」
「はい。心して臨みます」
「中に問題を用意してある。上級に至っては読む人もおいているからな。ヒントももらえることもある。頑張れよ」
会長はそう言い残しまた迷路にはいっていった。
俺らもそれに続いてはいる。
壁は段ボールで作られているが、立派な迷路だ。二週間でここまで準備したのはとても疲れただろう。さらには一週間でこれをグラウンドに設置。大変だなあ。
「よく短期間でこんだけやったよなあ」
「ほんと、三年生の本気がうかがえるよね」
西園寺さんはクスリと笑う。
俺らが他愛のない話をしながら歩いていると、少し広い場所についた。そして、三年生のクラスTを着た人が二人立っている。
「第一問。不動産でよくある駅から徒歩何分かという言葉がありますが、これは80メートルで一分です。この基準はある条件下の女性の基準となっておりますが、その基準とはなんでしょう」
ああ、よくあるよ。駅から徒歩5分だとか。たしかにそれは一分間に80メートルって言われているのは知ってるけど基準があるのか。
俺はわからない。
「ヒールで歩く」
西園寺さんが悩まずに即答した。
え、まじそれ。ヒールで歩いた基準なの? ヒールで80メートル一分。なかなかハードじゃないだろうか。
それが正解なの?
「正解! では、右にお進みください」
どうやら進路を教えてくれるらしい。
途中までは迷路だが、クイズで正解すると進路を教えてくれるそうだ。
「よくわかったね」
「あれは知ってたんだよ。うちの会社でも不動産にも手を出してるからさ。不動産の会社見学してるときに社員の人に教えてもらったんだ」
「へえ」
それで知ってたのか。
さて、そろそろ次の問題が来る。
また開けた場所に来た。
「問題。
『知っているだけで実行しないならば、わかっていないのと同じだ』といった人物は……」
「スティーブン・R・コヴィー」
「ですが!」
ああ、よくあるやつだ。答えたらですがと続く。
というか知ってるのかよ。スティーブン・R・コヴィー。
「この言葉に続くものはなんでしょう」
「……あれ? なんだっけ」
西園寺さんは忘れているらしい。
ここは俺の出番のようだな。
「『学んでも実践しないのならば、本当に学んだことにはならない。さらに言い換えれば、何かを理解したとしても、現実の場面に適用しないならば、本当に理解することはできない』でしょ?」
「正解! 左にお進みください」
これは知ってたんだよ。
中学生のころ、いちいち煽ってくる周りを論破して言い負かしてやろうと知識についての名言を調べていた。知識あることが偉いというのが間違っていると証明するために。
よもやこの場面で役立つとは。
俺らはこの後も順調に問題を解いていく。
「問題。漫画ジョジョの奇妙な冒険でエニグマの少年の本名をこたえよ」
「宮本輝之輔」
「アイネ・クライネ・ナハトムジークとは日本語でどういう意味でしょう」
「小夜曲って意味ですよね」
「ピカソの本名をこたえよ!」
「パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ファン・ネポムセノ・マリア・デ・ロス・レメディオス・シプリアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダッド・ルイス・イ・ピカソ」
順調に問題を解いていく。
ピカソのは完全にいじめだろ! それ俺もわからなかったぞ! 西園寺さんが答えたからよかったものの。西園寺さんは改めてポテンシャルが高いな。
というか、問題は大体西園寺さんが一人で解いているような。俺はジョジョのやつと名言の奴しか答えていません。
そんなこんなで最終問題。
最終問題は長い文章。見たところ推理するらしい。
問題はこうだ。
『長野在住の会社の社長が札幌市内にあるホテルで殺された。翌日の新聞に載るほど衝撃を与えた。
見るのも絶えない無残な殺され方。死因は刺殺。犯人が見つからず捜査が難航していた。
ある時、事情聴取にその会社に訪れる。対応したのは副社長を務める長男の太郎だった。
刑事:非常に申し上げにくいのですがお父様が何者かの手によって殺害されました。
太郎:知ってます。新聞でみましたよ。父がナイフで刺されたことは。
この発言がきっかけで太郎は逮捕された。なぜ?』
という問題だ。
まあ、考えたらわかる。これはたぶんあれだ。簡単すぎるだろ。
「これはなんで凶器がわかったんだろうな」
「そうだね。そこだよね。普通新聞には刃物で刺されたって書かれると思うし、刃物って色々あるからね。包丁、刀、はさみ、斧、のこぎりとか」
「ナイフって断定している時点でクロだよな」
そして、俺らは難なく正解し、クイズの迷路を出た。




