誘拐犯との戦い(残酷な表現あります)
トイレから戻り、元の場所にいく。
そこには、誰もいなかった。
ナイナイをやっていたはずの小寄も、非モテ集団も西園寺さんもいない。
どっか移動したのか?だとしたら連絡の一本くらいは入れてほしいんだが。
まあいいや。こっちから電話すればいいだろ。
俺は光の携帯にかける。
なぜ光かというと、一番上にあったからだ。桶川だから早い。
コール音が鳴り響く。
いーち、にーい。さーん。
でない。電話に気づいてないのか?音が騒がしくて聞こえてないな……。
切ろうとしたら、コール音が途切れた。
繋がったんだ。
気づいたか。
「もしもし光?今どこだよ。ったく、移動するなら一つくらい連絡よこせよな」
『ごっめぇーん。光忘れてたー』
……は?
「誰だお前」
『ええ?僕がわからないの?光だよー』
「違うだろ。声が違えし、そもそも光はそんな喋り方じゃねえ」
『……ちっ。ああ、そうさ。まあ、別にバレてもいいんだがよ』
「光たちはどうした?」
低い声がでた。
多分、心のどこかで怒ってるんだと思う。それを出さないだけで、怒ってる。
『安心しろよ。光くんたちというやつらは寝てもらってる』
「そうか。で、お前は何が目的だ?」
『金』
「ああ…」
理解した。
つまり、西園寺さんを誘拐して金をせしめようとしている悪党か。
理解はできた。でも、これって犯罪だろう。
そのときだった。
『理解で……お、おま!噛み付くなこのやろ!』
『ここからでた先の廃ビルの中だ!助けてくれ久太!』
『うるっせえガキ!お前は殺してもいいんだからな!』
恭一郎の声が聞こえる。
そして、恭一郎が殴られる音も聞こえる。そして、電話が切れた。
……ここからでた先の廃ビルといえばあそこしかない。
いくか。乗り込みに。
……だけど、一人じゃ不安だ。こういう時に男の友達がいないのは困る。
男の知り合いもいねえし……。
一人で武装して乗り込むか。
いや、この手を使おうか。
乗り込んだのは廃ビル。
俺は犯人の目の前に現れる。
「おら!乗り込んできてやった!隆たちを返しやがれ!」
大声で怒鳴ってやる。
犯人は怒り狂ったようにこちらをみていた。恭一郎はアザだらけになり、隆たちは恭一郎に駆け寄っている。縄に縛られている。
小寄も、しゅんと俯いていた。
「いい度胸じゃねえか。一人で乗り込んでくるなんてよお」
「はっ。ありがとさん。見た所お前も一人だけど?」
「いや?」
「久太くん!後ろ!」
俺は後ろを振り向くと、鉄パイプが振り下ろされた。頭に当たり、血がダラダラと垂れてくる。
やべえ。超痛い。真面目に痛え!!
痛い痛い痛いいぃぃぃ!痛いよぉぉぉ!
「はは!もう一発!」
もう一発、振り下ろされる。
そして、俺も縄でぐるぐる巻きにされていた。
身動きできなくされ、放り出される。隆の上に着地し、俺は犯人の顔を眺める。
「高校生のガキ五人に目当てのやつが一人だ。これで儲かるってもんよ。、あとは身代金を要求するだけ……」
よし。これで、もう準備は完了。
俺は、挑発するために、声を出す。
「なあ、あんたらさ」
「なんだ?」
「ちょっと、間抜け過ぎない?」
「あ?なんだ?こら。ふん縛られて身動きできねえのに軽い口叩くんじゃねえぞ!」
顔を蹴りつけられる。口の中を切ったのか、血が出てきた。
だが、本当に間抜けなのだ。
俺が何もしないでくるわけがないだろ。
「そこまでだ貴様たち!手を上げろ!」
警官が銃を構え突入してくる。
犯人は俺を睨みつけるような視線で見てきた。だから、間抜けだといったのだ。
何の考えもなしにくるわけがないだろ。110番に電話をかけ続けてたんだよこの野郎。
「お前!」
「持ち物検査してねえからだよバーカ。俺はバカじゃねえんだよ。後のことも想定してきたんだ」
今もずっとかけ続けている。
犯罪者としてお前は失格だよ。犯罪を犯すときはもうちょい用心深くないと。
「う、動くな!こっちには人質がいるんだ!手を出したらころ」
「ぺっ」
俺は唾を犯人にかけた。
「うわっ、汚ね」
「とりゃああああ!」
油断した犯人は警官のアッパーをくらい気を失う。
はは。ほんと、バカな犯人だよ。
思い込むということは何よりも恐ろしいことだってどこかのサラリーマンも言ってた通りだ。
「はあ。痛え……」
殴られた頭が超痛いです。




