副委員長に選任されました
遅れて到着した俺は頭を下げて席に座る。
席に座り、回ってきた紙を受け取り目を通す。底には今年の学校祭の大まかな内容が書かれていた。
ふむ。一日目がクラス個別の模擬店で二日目が部活動のステージ発表か。
で、一日目の体育館ライブは生徒や先生からの有志を募り、即席バンドの演奏や即席コンビによる漫才などの娯楽があるらしい。
これは去年と同じだ。去年も大まかにはこれくらいだった。
「何か質問のあるやつはいるか」
会長がそう聞くと全員無言に。それをなしと受け取った会長は話を続ける。
「よし。ではまず役職を決めるぞ。まずは委員長は生徒会長である私、四之宮 佳子がやらせてもらう。決めるのは副委員長、総務、広報、そして雑務。これらどれかには所属してもらう。
やる仕事を大まかに説明すると、副委員長は私の補佐だ。総務は予算と備品の管理。教室の管理もすることになる。広報は学校祭の宣伝用のポスター制作、チラシも制作。学校祭の装飾もやってもらう。雑務は基本雑用だ。だが、有志の取り仕切りを任せる。さあ、まずは私を補佐する副委員長を決めたい。やりたいやつはいないか」
四之宮会長の問いかけに誰も反応をしない。だれもやりたくないのだろうな。
まあ、そりゃそうだ。俺だってやりたくねえもん。四之宮会長の補佐が嫌なわけじゃなく、単純に副委員長という重要な肩書を背負いたくない。
「いないか。じゃあ、私が指名しよう」
いないから指名するらしい。これって指名制なのかよ。立候補制だと思ってたよ。
「そこのイケメン。君に決めた」
「……?」
周りを探す。
指をさされてるのは明らかに俺のほうだけど、だれかわからない。……って、俺の周り女子しかいない。イケメンじゃないよ。
――もしかして俺ですか?
「お、俺?」
「そう。俺だ」
「……おことわ」
「よし。次、総務」
あれれー? おかしいぞー? なんだか拒否することを拒んでいる。なんでだろー(棒)
いや、まあ、拒否権はないんでしょう。悲しい。拒否権は人間全員に認められてるはずなのにな……。治外法権なの? ここ。
「副委員長。ちょっときてくれ」
委員会が終わり帰ろうとした俺を引き留めるのは四之宮会長だ。
いったいなんなんですか。というか、俺まだ了承した覚えがないんだけど……。
「明日の打ち合わせをしたい。これから毎日打ち合わせをするから残ってくれ」
「……はい」
俺了承してないのにどんどん話が進んでいくなー。
「えーと、明日は何をさせようか」
「……とりあえず、広報にはポスターを制作させて雑務には有志募集を訴える紙を作らせたらいいんじゃないですか」
「なあ、怒ってるのか?」
「少し」
いや、俺の意見も聞いてないんですからね?
ちょっとだけむかついてます。さすがにキレるまではいってないが。
「遅刻した罰だと思えばいい。君は頭を下げただけで私には謝罪がなかったからな」
「ほんっと申し訳ございませんでした!」
そうでした。軽く頭下げただけで済ませてました。すいません。自業自得……ってあれ? あの時非モテ集団が引き留めてなかったら俺間に合ってたはずなのにな。
「はは。冗談だ。ただ、君が一番適していそうだと思ったからな。副委員長」
「どういうことです?」
「今年の学校祭、結構金があるんだ」
「はあ。誰かからの支援ですか」
「ああ。そうだ。誰だと思う?」
「いや、そりゃ四之宮会長の親でしょ」
四之宮会長はたしかいいところのお嬢さんだった気がする。
結構金持ってると思うし。
「いや、それもあるが、違う」
「じゃあ、誰ですか?」
「西園寺家だ」
「……ああ」
たしかに西園寺さんも裕福だからな。父が会社を経営しているという話を聞いている。それも、世界的に有名な会社。詳しくは知らないが、お金には困っていない模様。
「理由が『空とその恋人である小鳥遊くんのために例年度より豪華にするといい。寄付をするから、とりあえず空と小鳥遊君を楽しませてね。あと、この内容を小鳥遊君に伝えて。お母さんによろしく』といっていた」
俺のお母さん何者だ。大企業の知り合いってある意味凄いが。
「珍しいと思ったよ。娘愛が大きい西園寺さんが簡単に恋人を認めるなんて。空が高校に入学するときには『悪い虫がつかないよう見張っておいてくれ。恋人ができたらその恋人を殺すかもしれない』っていっていたほどだ」
怖えよ! 西園寺さんの父親って怖すぎるよ。よく俺は許されたな! 母さんの影響が大きいのか?
「あ、あと君って何者かも知りたくて近くに置いた理由もあるけどね。今の話のようになんで西園寺さんに殺されないのかが知りたい」
と、笑ってみせた。
会長は綺麗なんだけど、なんだか、とてつもなく、怖い。




