空へのプレゼント
空が俺を疑っているようなので今日は早めに帰った。
「パパお帰り」
「おう。ただいま」
伊織の頭を撫で、鞄を置く。
すると、空が駆け寄ってきた。
「きゅ、久太君おかえり」
「おう。ただいま」
空は何かもじもじしている。
何か言いたいのだろう。たぶん俺の帰りが遅いことだと思う。
「俺の帰りが遅いのは浮気じゃないからな」
「……信じていいの?」
「ああ。俺は今でも空が好きだ。浮気なんて考えたこともない」
これは本当だ。
たまにご令嬢に誘惑されることがあっても俺は揺らいだりしない。昔から空一筋の俺は揺らぐ自信はない。俺は好きな人は好きでい続けたいからな。
「じゃ、じゃあなんで遅いの?」
「それはいえない」
言ったらサプライズじゃなくなるしな。
でもまあ、プレゼントを決めたしもう遅くなることはない。俺の部屋に隠したらバレそうだから会社の社長室にでも隠しておこう。
「むうぅ……。私心配してるんだよ。疑いたくないけど……久太君かっこいいし優しいからだれでも助けちゃいそうで」
「助けるけど俺が好きなのは空だけだ」
「二人の世界に入るのは私のいないとこでしてくんない?」
伊織がジト目でこちらを見ていた。
「で、パパ。私には教えてよ。気になるから」
「……機会があったらな」
ここで頷くと空が拗ねそうだ。
空はお風呂に行った。
その隙を見計らって伊織は近づいてくる。
「どうせパパのことだから誕生日プレゼントを選ぶのに四苦八苦してたんでしょ」
「わかってるんなら聞くなよ」
伊織にはバレバレだったようです。
「ママ自分の誕生日を忘れてるし自分が誕生日近いってこと知らないんだろうね。だから疑うんでしょ」
「まあ、疑われても仕方がないもんだからな」
いつも深夜に帰ってたらそうなる。
俺が空の立場でも疑ってしまうと思う。
「誕生日の日にサプライズでやるから今はそのままにしておいてくれ。俺はばれないようになんとかするから」
「ママは私に任せて。隠し通すから」
と、俺らの中で同盟が結ばれた。
そして、空の誕生日を迎えた。
空は自分の誕生日だと忘れているのかいつものように晩御飯が用意されていた。「おかえりなさい」と一言告げた後、空は席に座った。
俺はカバンからプレゼントを取り出す。
「空。誕生日おめでとう」
「……え?」
急だったのか驚いている。ししし。サプライズだからな。
「今日は何日だ?」
「えっと……あ、わ、私の誕生日だ。お、覚えてたの?」
「当たり前だろ。俺が忘れるわけないって」
空の誕生日は覚えている。空も俺の誕生日だけは覚えているんだよ。
「パパが遅くなってた理由はプレゼント選びだよ。毎日毎日悩んでたらしい」
「そ、そうなの? そ、そうともしらず私疑ってしまって……! ごめんなさい! 私、ダメだよね。少しだけ疑っちゃったし……。ごめんなさい!」
「いいよいいよ。俺は気にしてない」
空は必死に頭を下げていた。
罪悪感を感じる必要はない。それくらいで俺は嫌いにならない。
「もう私は疑わないよ。ごめんなさい」
「おう。さ、空。これつけてみてくれ」
結局選んだのはエプロンだ。普段身に着けるやつがいいよなと考えたらこうなった。
「エプロン! ありがとう! つけてみるね!」
空は嬉々としてエプロンを着始めた。
うん、やっぱ似合う。歳を取っても空は可愛い。
空の笑顔が俺にとっての財産だと思う。笑ってくれればそれでいいや。疑われても、笑ってさえくれればね。
笑顔の空はいつもより輝いて見える。
「ママって何歳だっけ?」
「三十後半だな」
「それにしては……可愛いよね。二十代でも通じるんじゃない?」
「顔が老けてないからな」
「いや、それはさすがに補正かかりすぎだけど少し老けた二十代って感じだよ。ママ可愛いなー」
いやいや。老けてないだろ。昔のまま可愛いだろ!!




