久太が浮気?
私が久太君の奥さんになって十数年。初めて一家離散の危機です。
最近、久太君の帰りが遅いんです。心配で問いただしてみても答えてくれませんでした。
……浮気?
久太君はかっこいいし、他の女性にもモテる。けど浮気って考えたくないなあ……。
なので、お友達の皆さんに調べてもらっています。疑いたくないけど……心配で仕方がないの。私、変かな。夫の行動を疑うなんて……。ここは信じて待つべきなのかもしれないけど……。
ううーん。なんか、私ってねちっこい人だな。
「パパが浮気なんてするはずないと思うけど」
「信じたいけど帰ってくるのが遅いから……」
「会社でなんか問題起きたんじゃないの?」
「社員さんに聞いたけど定時には帰ってるって」
定時に会社を出て、1時までの空白の時間。なにをしてるんだろう。
……久太君。浮気なんて、してないよね。
「パパってサプライズ好きなんだ」
と、伊織がそうつぶやいていた意味も気づかないでいた。
俺は今俺の会社の直接販売店にいた。
商品の前でにらめっこを続けている。ここのところ、深夜まで商品とにらめっこしていることが多数だ。
悩むんだよ。プレゼント。もう少しで空の誕生日だ。今年サプライズで送ってみようかなと思っているわけだけどこんなに悩むとは思っていなかった。
「ううん……。空って何が喜ぶのかな」
空は何事もそつなくこなす。楽しそうにこなすけど、どれが一番楽しいのかわからない。
うーむ。こういう時は伊織にも聞いてみようかな。伊織なら同じ女性だしわかるのかもな。でも、伊織から空にばれたらどうしよう……。
とその時だった。
視線を感じる。振り向くとそこには黒い服を着た人が俺を見ていた。探偵さん?
相手もバレたと思ったのかこちらに近づいてきた。
「私こういう者です。あなたの奥さんから依頼を受けまして。あなたが浮気してるんじゃないかというね」
「え? 俺が浮気? するわけないじゃないですか」
「でしたらここでなにしていらっしゃるんですか?」
んー、空が雇った探偵にばれたら空に伝えられるのかもな。
いや、箝口令を強いておけばいいのかもな。
「空には内緒にしてほしいんですが」
「ことと内容によりますが」
「えーと、もう少しで空の誕生日なんだ」
「はあ」
「それで、サプライズにプレゼントを買っていこうと思ってるんだけど何がいいか悩んでずっとにらめっこしている状態で。店員さんに聞いてもらえればわかりますよ」
探偵さんが確認しに行き、裏がとれたらしい。俺に頭を下げてきた。
「このことは秘密で。サプライズなんでばれたら面白くないじゃないですか」
「わかりました。奥さんにはそれとなく誤魔化しておきます」
「ああ。頼む」
といって探偵さんは去っていった。
俺が浮気か……。浮気しようと考えたこともないんだけどな。まあ、帰るのが遅くなってるし、仕方ないといえば仕方ないかな。




