新年迎えて①
あけましておめでとうございます
新年。明けました。
「あけまして、おめでとう。空」
「おめでとう…。久太くん」
赤ちゃんも無事生まれ、病院に連れてくることができた。
井上さんがどうなったとか、そんなことは今は忘れよう。今は子どもの誕生を祝うだけだ。
「ぱ、パパ!」
伊織が焦ったように駆けつけて来た。
「どこ行ってたんだ?いないから心配したぞ」
「ちょ、ちょっと初詣に……。もう産まれたと思うけどお守り買ってきたんだ」
といって、伊織が手渡して来たのは安産祈願と書かれた。
伊織は神頼みしていたのか……。よく出来た娘だ。
「で、あ、赤ちゃんは!?」
「落ち着け。産まれたよ。妹と弟が出来たな」
そう、双子だ。
前に検診に来た時に双子だと言っていた。伊織にはそれを隠していたのだ。
二卵性だから顔がめっちゃくちゃ似てるということにもなってないから大丈夫だろう。見分けは多分つく。
「よ、よかったぁ…」
安心で気が抜けたのか、その場に座り込む。
俺も、ひと安心したよ。
「久太くん。名前、どうする?」
「あ、そっか。名前……」
名前を考えていなかった。
ここのところ多忙だったから考える暇もなかったんだよな。
うーん、ここで考えろって言われてもな……。
「伊織、考えてみるか?名前」
「わ、私!?無理無理無理無理!私なんか変な名前つけそう!」
「大丈夫大丈夫。男の子は俺がつけてやるから。さ、つけてみなさいな」
「え、ええ……。お、女の子の名前…?」
男の子の名前か……。何がいいんだろうな。
久太と空からとって空太?西園寺 空太。うーん、安直すぎるか?
「え、えーと、ママが空だから海!宇宙の宇に海って書いて宇海!」
「西園寺 宇海か。いいな。あとは俺か……」
結構伊織もセンスあるな。それは空譲りか。
うーん、男の子の名前かー。太郎とかそんな単純なのは嫌だよなー。
やっぱ空太か?
うーん、あ、大地でええやんか。
空、大地、宇海。これで行こう。
「男の子は大地にするか。空、大地、宇海だ」
「おお、いいね。なんか自然の名前で繋がってるよ」
「俺は繋がってないけどな」
久太だからどこにも自然の要素はない。
「ち、ちなみに宇海と大地ってどっちが上なの?」
「産まれたのは大地かららしい。大地が兄だな」
将来、どんな子に育つのかは俺にも空にもわからない。
高校生になるころは多分俺は五十は超えてるな。伊織も三十はいくんじゃないか?
歳の差がある姉妹だけど…。まあ、仲良くしてもらいたいな。
大地には西園寺家を継いでもらいたいし、小さい頃から教育はきちんとしないとな。
あとは……と。
俺の友人にも産まれたことを伝えておこう。
竜太郎に隆と恭一郎、光。そして禊梵姉妹に結城に吉祥と村上。
吉報を伝えられるのが嬉しい。早く、幸せを伝えたい。新年早々こんなに幸せなことなんてあるだろうか。
「俺はちょっと隆たちに幸せを伝えてくるよ。伊織。空を頼むな」
「う、うん」
「久太くん。小波くんたちに宜しく伝えておいてね」
「ああ」
俺は懐からスマホを取り出して隆のスマホにかけた。
「ふう……」
空は深く息を吐いた。
「ありがとね。伊織。お守り、嬉しかったよ」
「ママ大丈夫?」
「大丈夫。伊織産んだ時のほうが色々とひどかったから」
空は、微笑んでいた。
空は過去を振り返っていた。
「伊織産んだ時ね、久太くんは慌てて安産祈願じゃなくて合格祈願のお守り買って来たんだよ」
「パパが?」
初めての出産ということもあり焦っていた久太は合格祈願のお守りを買ってきて空に渡していた。合格祈願のお守りだと知ったら買い直してくると病院を慌ただしく出て行って買ってきた。
今回は2回目だから、多少は落ち着いている。
「他にもね、入院してたら毎日来て、仕事を投げ出して来てたから秘書さんに怒られてたんだよ」
「そ、そうなの?」
「伊織が女の子だからどう接したらいいんだろうと相談して来てねえ。伊織から『パパのパンツと一緒に洗わないで』って言われたらどうしようとか未来の心配してたよ」
伊織は笑った。
伊織は一度もそういう事を言っていないと自分でもわかっていて、それが普通なんだと思い込んでいたらしい。
「伊織は久太くんを毛嫌いもしないから安心だよ。思春期のときって普通父親を毛嫌いするからね」
「私って、ヘン?」
「うん。でも、優しい子だから仕方ないよ。久太くん譲りの優しさだね」
空は惚気た。
まだまだお互いがお互いを愛しているということが伝わって伊織は嬉しかったが、反面恥ずかしさもある。
そして、憧れた。
自分も、いつかこういう恋が出来たらなと、そう思ったのだった。
「パパとママってラブラブなんだね」
「そうだよー。私はまだ好きだよ。伊織もいるし、大好きな久太くんもいるし、幸せだよ。ありがとね」
「……こちらこそ」




