エピローグ
空と結婚して月日がたった。
俺は、アルバムを閉じる。
「ママとパパの恋って普通だね」
「うっ、それを言うか」
娘である伊織がそう言って笑う。
空と俺の中にできた子供は、とても可愛く育った。美形な顔をしており、空に似ているような顔。というか、瓜二つ。
「今でも好きなの? ママとパパって」
「もちろんだよ。私は久太くん以外愛せる自信がないの」
「以下同文」
今でも空が好きという気持ちは変わっていない。
まだまだ俺は好きなままだ。不満っていうのはない。
「で、お前はどうなんだ? 好きな人とかいないのか」
「好きな人? 私にはいないよ」
「いたほうが楽しめるぞ」
「そうだね。私も久太君といるのがとても楽しかったし、学校に行った目的が大体久太君に会うためだったから」
俺も、空と一緒にいるのはとても楽しかったし。むしろそっちの方が何よりも楽しかった。
「それより、パパ。新しいカバンがほしいんだけど」
「前買ってやったでしょ……。それで我慢しなさいな」
「ええ、いいじゃん」
「だーめ」
「けち」
「ケチで結構」
「なにそれ」
伊織が笑った。
俺も、つられて笑ってしまう。
「さーてと。私はご飯でも作るね。久太君は仕事あるんでしょ?」
「ああ。部屋で書類見てるから出来たら呼んでくれ」
今俺が会長を継いだから、いろいろと仕事がある。
君清さんも八十を超えているので、会長降りて今度は俺が会長となった。つい先日のことが何だが。君清さんは今は隠居生活まっしぐらだ。
「よっこら……うわっ」
俺は、立ち上がろうとしたらこけてしまった。
立ち上がろうとすると、手に何か柔らかいものが当たっている。もにもにと揉んでみた。なにこの柔らかいの。
「……パパ。なに私のおっぱい触ってるの」
「あ、柔らかいのは伊織のだったのか」
「……久太君? 私にならいいけど伊織にはダメだよ?」
「……あ、そっか」
つい、空と同じ感覚で……。いや、空のもあまり触る機会はないけどさ。あるとしたら……夜の営みくらいだ。
だから、慣れてしまった。なれって恐ろしい。
「ごめん」
「……ほんっと死ね! パパなんて大嫌いだ! せっかく誕生日を祝ってあげようと思ったけどやめたもんもう! 勉強してくるからパパ邪魔しに来ないでね! そして死ね!」
と荒々しく去っていった。
「……今のは久太君が悪いよ」
「……だな。あとで謝っておく」
俺は、茫然とただ見ていた。
「……久太君。胸もみたいなら、いいよ? 私のなら」
「……遠慮しておく」
そこまでして、胸は揉みたくない。
「そういえば、久太君って高校とか私の胸触んなかったよね」
「あの頃はまだヘタレだったし……」
「ふふ。そうだね。でも、今も昔も変わらないよね。今でも私に優しいし」
「ああ。そういう空もだけどな」
「お互い様か」
そして、少しの間無言になる。
思い返してみれば懐かしい。空に告白して君清さんが張り切って結婚式を挙げたときとかは俺は理解が追い付けなかった。それほど、驚きだった。
でも、よかったとも思ってた。だから……。
「好きだよ。空」
「……?」
「やっぱ、昔から好きだわ」
「私も好き……けど、突然なに?」
「過去を振り返って懐かしく思ってな。今の気持ちの再確認をしただけだ」
「そっか。約束したもんね。好きでい続けるって」
「ああ。破らないことも誓ったからな」
俺らは笑いあった。
もともとモテなかった俺を変えてくれたのは空だ。変えるきっかけを作ってくれたのは空で、日々を楽しませてくれたのも空だ。
俺は空とはもう、長い間共にしている。これからも、一緒に歩みたい。
~FIN~
これで完結となります。
一日二話投稿で7月から投稿して12月に完結しました。約5か月もの間この作品を読んでいただけて嬉しかったです。ブックマークが増えて行って、調子に乗ってガス欠になるというのも多々ありましたし、最後に至っては物語が加速して、月日が経つのも早くなっていました。
読んでいただけて嬉しかったですし、書いていてとても楽しかったです。
完結はしましたが、たまに短編を書くかもしれません。
あとがきとしては短いかもしれませんが、ここまで読んでいただきありがとうございました!!
先生の次回作にもご期待ください!
PS.次回作、投稿してみました。




