告白の練習の本番②
空が、わなわなと震えている。その近くには、笑顔の村上も一緒に。
き、聞かれてたのか?
お、俺の、俺の告白を!?
「きゅ、久太君!」
「ひゃ、ひゃいい!」
恥ずかしい! 練習じゃなくて本番じゃないか! さては吉祥裏切ったな!
吉祥を睨むと口笛を吹いていた。しらじらしい……
「そ、その、久太君」
「……いや、いい。言わないで、くれ」
「……いや、久太君も言ったんだし、私も恥ずかしいけど言うね」
「…………」
俺は、顔を隠してしゃがみ込む。
穴があったら入りたい。そして埋められたい……。
「うん。結婚、しよ?」
「……うん」
こうして、俺らは結婚することが決まった。
俺と空は18歳で結婚した。
学生婚で俺の母さんと父さんにも心配されたし、佳にも大丈夫と聞かれ、大学からも少し言われたけど、臼田先生が擁護してくれた。
というわけで、今、結婚式、なう。
いやはや。どうしてこうなった。
俺、なんでこの場にいるんだっけ。はは、だれか親戚が結婚したのかな。
と、突然ドアが開かれた。
開いた主は、メイクを施した空。とても、様になっていた。それはもう、結婚する人みたいで。空が結婚かあ。お相手は誰だ……俺だ。
「久太君。いつもよりかっこいいよ」
「……いまだに現実がわからない」
お、俺が結婚するとか……。
い、いきなり話が飛躍しすぎだろ! 俺らはまだ学生で……。誰だよ結婚なんて考えたやつ! 俺だよ考えたやつ!
「うーん。私も結構戸惑ってるんだよね」
「俺ら、君清さんに結婚するって告げただけだよな」
「式場とか手配してもうすることになると思ってなかったよ。私は卒業してからのつもりだったんだけどなあ」
「俺も……」
この結婚式は、君清さんが張り切って仕立て上げた。それはまるで、俺たちへの贖罪だといわんばかりに。
そして、結婚式では泣いていた。
吉祥たちも、俺らを祝福してくれたのはいいんだ。
でも、ち、誓いのキスは恥ずかしかった。
「これで、私と久太君は家族だよ。これで、私を取られる心配も久太君が取られる心配もないね」
「そう、だな」
もう、事実は出来たのだ。結婚までしてしまったのだから奪うことは容易じゃない。
「あ、そうだ。お互いが誓いたいことあるんだよ」
「ち、誓いたいこと?」
「うん。私は、久太君を一生愛し続けることを誓います!」
「……俺も、空を、いっしょ……。恥ずかしい」
「私を一生愛せないの?」
「愛すよそりゃ! でも、こういうのって俺は……」
「ふーん。愛せないんだ」
「空を一生愛します!」
なんか、空の手の上で踊らされてるみたいだ。
でも、不思議と嫌じゃない。俺は、心の底から空が好きみたいで。
「うん。大好き、久太君」
「……俺も」
空が抱きついてきて、唇と唇を重ね合わせた――。
やめて! 空と結婚したせいで久太の理性がなくなったら本能が飛び出してしまう!
お願い死なないで小鳥遊! あんたが今ここで理性が亡くなったら、吉祥や空との約束はどうなっちゃうの? 理性はまだ残ってる。ここを耐えれば、煩悩に勝てるんだから!
次回、「小鳥遊死す」。デュエルスタンバイ!




