告白の練習の本番①
あの事件から特に何もなく、二年生に進むことができた。
そして、あの時のことは今でも忘れない。俺の気持ちが本物と感じたことは、決して忘れない。
だから、忘れないように俺は決意した。
今は学生だとか、そんなのは知らない。
俺は、空にプロポーズをすると、心に決めた。
結婚してほしいと、誰かに奪われるのはもうこりごりだ。だから、奪われる前に、俺が空を奪う。結婚してしまえば、奪われることはない。
俺も空も結婚ができる年齢だ。
だから、大丈夫。法律的にはグッド。
ただ、学生婚……というのは。
「……学生婚、か」
そうつぶやくと、隣に座っていた吉祥さんが驚いたような目でこちらを見る。
「なになに!? 結婚するの!?」
「い、いや、決まったわけじゃなくて」
「でも、考えてるんでしょ?」
「……まあ」
「いいね! それ、私も手伝うよ! プロポーズするんでしょ?」
うう、そういう期待している眼で見ないでくれ。俺は相当なヘタレなんだ。
「久太君。お昼……って、あれれ? 吉祥さん。久太君いないの?」
「あ、ああ、えっと、小鳥遊君はおなか痛いっていってトイレに行ったかな」
吉祥さんにちらちらとみられつつ、俺は隠れていた。
や、やめろ。決意したはいいけどいざ対面すると恥ずかしいんだよ。なかなか言い出せないもどかしさとかわかってくれよ。
「そっか。戻ってくるかな」
「たぶん空ちゃんが外にいるって思って外に行くと思うから外で待ってたらいいよ」
「そうだね」
「さ、沙耶も連れてっていいから」
「……はあ。わかりました。じゃ、空さんいきましょうか」
といって村上は空を連れて出ていった。
「……なんで隠れたの?」
「……恥ずかしかった」
「案外ヘタレ」
「わかってることを言うな」
自分でもヘタレだって自覚はあるんだよ。放っておけ。
自分でもなかなか好きとは言いだせない俺が、いざ本人の目の前にしてプロポーズができるとでも? できるわけないだろう。
「情けないなあ。じゃ、私がいっそのこと場面を作ってあげよっか」
「や、やめてくれ」
「ふふふ。やめてと言われたらやってみたいんだよねえ」
「や、やめろ!」
「はいはい」
吉祥はニヤニヤしながら了承してくれた。
くっ、腹立つ。こいつの笑顔腹立つんだけど!
「まあ、からかうのはいいとして、まずはそのヘタレを直せ!」
「直せたらそう簡単に苦労しねえって」
「まあ、そうだよな。じゃ、練習でもするか」
「れ、練習?」
「そ、練習」
プロポーズの練習ってことか。
そ、それならまだ……本番は無理ってことだし。
「よし、じゃ、私を空ちゃんだと思って告白して! 3、2、1。はいっ」
俺は深く息を吸った。
「そ、空! 俺と結婚してください!」
そういった瞬間、ガタっという音が講堂内に響き渡った。俺がその方向を見てみると、そこにいたのは、空だった。
土曜日の0時に最終話が掲載されます。




