削除された物語の復刻③
と、去っていった智慧さんだが、なぜだか戻ってきた。
「空ちゃん。忘れてたわ。はい、お年玉」
「おと……あ」
そういえば、もう、正月か。
昨日あんなことがあって、俺はすっかり忘れていた。そういえばもうお正月。
「それじゃ、空ちゃん。さようなら」
「うん。お年玉ありがとう」
といって、車に乗って走り去った。
嵐が去った。俺は、地面にへたりと座り込む。疲れた。一言で表すとそんな感じだ。
「久太君、あ、頭から血が……」
「んあ? ああ、頼んで頭をこすりつけてるときに切れたのかな」
ティッシュで血を拭きとる。
「大丈夫?」
「ああ」
「な、ならよかった」
俺と空の別れた騒動は、これだけ疲れたのに、わずか二日で終わったのだ。いとも呆気なく、俺と空はよりを戻した。
まだ、俺は空が好きだ。これからも好きでい続けることを誓う。
「……久太君、空」
「ん? なに? お父さん」
「すまな、かった」
君清さんが頭を下げた。
「私自身が判断しなければならなかったのに、頭を下げるような真似をさせて。悪かった。これからは自分で決める。だから、許してほしい」
と、俺らにむかって謝罪の言葉を述べた。
君清さんにも理由はあった。それは仕方のないことだと思う。
「君清さんにも理由があったんですし俺は構いませんよ」
「もう、私と久太君は元の関係に戻ったんだし、もういいよ」
俺らは笑って許してあげた。
君清さんにはたくさん迷惑をかけてるし、これくらいは許さないとダメだと思う。
「……詫びになるかわからないが、お年玉を多めに用意した。久太君にも、空にも。もっていってくれ」
「あ、ありがとうございます」
君清さんからありえない金額のお年玉をもらい、家に帰ると母さんが笑顔で待っていた。どうやら電話でどうなったかを聞いたらしく、よくやったと背中をバンバン叩いて、お年玉を大目にくれた。
……そんなにたくさんもらっても。
それに、俺はバイトもしているし、それなりに金はある。
もう、いらないのだ。もらえるものはもらっておくが。
「疲れたあ」
俺は、力が抜けて、ベッドに倒れこむ。
会長にもあとでお礼を言っておかないとな。
そして、俺はそのまま意識を投げ出した。
その時見た夢は空とキスをしている夢で、起きた瞬間に思い出してしまい顔が熱くなったのは言うまでもなく、そのあと空が好きだよってメールが来て、言葉を失い、ベッドに倒れて鼻血出してしまったのは秘密にしておこう。




