削除された物語の復刻②
また、付き合うことを許可された。
思わず抱きついて喜んだけど……。今になって恥ずかしくなってきた。
「君清。それでいいのか?」
祖父さんは睨みつける。
君清さんは目を伏せた。そして、弱々しく口を開く。
「私は、西園寺グループの会長である前に一人の父親です。やはり、娘には悲しい思いをしてもらいたくないんです。だから、私は許可しました。娘のしたいことをさせました」
君清さん……!
やっぱり、君清さんはかっこいい。こんな時にこそ決めてくれるのだ。
「ほう? それで後悔しないのな――」
その時だった。
空の家の前に黒い高級車が止められる。中から降りてきたのは高年齢の女性だった。空はその人を見たら笑顔になる。
「こんにちは。君清。空ちゃん」
「おばあちゃん!」
おばあちゃん?
「君清。見ない間に立派になったわねえ。空ちゃんも、ほんと、綺麗だわ。あ、そちらが彼氏さん? どうも初めまして。私は空ちゃんの祖母の西園寺 智慧といいます。いつもいつも空ちゃんがお世話になって……。話しによると貴方は千代の息子さんだとか」
「は、はい。そ、その、お、お付き合いをさせてもらってます!」
「空ちゃんをよろしくね。……で、ここからが本題なのだけれど」
「ほ、本題?」
も、もしかして空と付き合うには私が出す試練を乗り越えろとかいうつもりじゃないだろうか。
「ああ、そんな不安そうな顔しなくてもいいのよ。私は反対してないわ。寧ろ賛成。こんな頑固ジジイには逆らっていいのよ」
「頑固ジジイ?」
こ、この人ってこの祖父さん嫌いなの?
自分の夫を頑固ジジイって……。
「で、あなた? なんで勝手に空ちゃんを泣かせてるのかしら? その話、きっちり聞かせてもらうわよ?」
「あ、えっと、その」
ああ、この人もあれか。母ちゃんには弱いのか。
どこの家もかかあ天下なのだろうか。たしかに母ちゃんは最強だけども。
「人の恋路に茶々を入れるなんてあなたはどうかしてるわ。それともなに? 邪魔をしたいのかしら。それなら私は許すことはできないわね」
智慧さんの笑顔が怖い。
「君清。悪かったわね。この人、嫉妬してただけなのよ。あと、単純に考えが古くて、頑固で、わがままなの。貴方には迷惑かけたわね」
「い、いえ。そんなことは」
「あなたは会長なんだからこのジジイになんか従わず自分の意志で決めなさい。貴方が簡単に流されてどうするのです。貴方がきちんとしなければ空ちゃんは傷つくんですから」
ジジイ呼ばわりとは強いな。
「それから……彼氏さん」
「は、はいっ!」
「お名前、なんていうの?」
「小鳥遊 久太です!」
思わず直立してしまう。
「小鳥遊くん。空ちゃんをよろしくね。空ちゃんは甘えん坊で、人一倍気遣いができる子なの。それに、この子は好きになったら離すことをしないから」
「はい! こちらこそ、よ、よろしくお願いします!」
俺は深々と礼をした。
「ほら、帰るわよ。きびきび動きなさい」
「ほ、ほらわしはまだ病み上がりなんじゃ。それは……」
「言い訳無用。あなたが寝込んでいる間君清は西園寺グループの会長としてよくやってくれたのよ。それをあなたは……。恩知らずで恥知らずなのはどちらなのかしらね」
「す、すいません」
つ、強い、な。
大事な話になるのですが、あと数話でこの物語が終わる予定です。
ネタ切れというわけではありません。書く気力がないというわけでもなく、ただ、物語として、きちんと終わらせたいと思っており、自分のタイミングがここらへんなのです。
なので、一気にブーストしていきます。
自分勝手な理由なのですが、ここで謝罪を入れたのでここからは俺のターンとしたいですね。




