クリスマスがやってきた④
「プティキュア、プティキュア」
マイクを持ち、国民的美少女アニメ、二人はプティキュアのオープニングを歌っている。いや、歌わされている。誰かというと、茉莉ちゃんに。
茉莉ちゃんとカラオケで一緒に歌おって言われたから俺は歌ったのだが……。
初代プティキュアのオープニングかよ。今と違うやつだろ。今はキラキラプティキュアだろうが。なんで昔のなんだよ。いや、たしかに初代が面白かったけどさ。
でも、こんな衆人環視の前で来れは歌いたくなかったよ。
「初代とはわかってるでござるな!」
「なあ、初代の何がいいんだ? 女児向けアニメ見てんのかよお前」
「何を言うでござるか! プティキュアは男のファンも多数いるでござる! 女児だけではない!」
そうだ! 俺もプティキュアは初代が好きだ。
初代だけ二人で闘ってるのに他のプティキュアは五人で闘うんだよ? どんだけ五人が好きなんだよ。二人で敵に勝てる初代が一番最強じゃねえか。
「いきてうんだかあー、失敗なんてめじゃないー」
「笑う門には福来るでしょ! ネガティブだってぶっ飛ぶぅー!」
初代と聞いてテンションが上がってきた。
茉莉ちゃんと歌い終えて、今度は空が歌う番になった。
空は渋く演歌をチョイスした。
……付き合い始めの頃を思いだす。太鼓でモーツァルトの魔笛をやろうとしたことを。なんだかチョイスが渋い。
流恋草とか……。俺わかんねえよそれ。
「ねえ、小鳥遊君。空ちゃんって中身おばあちゃんだったりする?」
「さ、さあ?」
いきなり演歌だよ! 俺も疑わざるを得ない。
チョイスが渋いのもあるけど、なかなか上手いというのもツッコミたい。演歌なら川の流れのようにとかがよかったような気がしたんだが……。
そして、空が歌い終わり、今度は吉祥と村上が上った。
歌う曲名は「残酷な天使のテーゼ」だった。
「ざーんーこーくーな天使のように、しょーおーねーんよ、神話になーれー!」
おお、上手い。
「青い風が今っ! 胸のドアをたたいてもっ!」
う、歌い方が独特すぎるんだが。伸ばさないでそのまま切る。歌い方を学びなさいな。
そして、歌い終わり、次々と登っていく。
最後は俺となった。
また、俺なのだ。さっきのは茉莉ちゃんの手助けとしただけであって、俺の評価ではない。つまり、俺はもう一曲歌わざるを得ない。
曲は何にしよう。好きな曲……。ああ、あれがあるか。
ボーカロイドで有名な曲を歌えばいい。
俺はその曲を賭けた。
もちろん千本桜だ。
俺はもちろん大熱唱した。
奇跡なことに千本桜は誰も歌わずにいたのでやらせてもらっている。恭一郎はゲームのやつだし隆はアニソンを歌っていた。
光もボカロを歌ったけど違う曲。簡単なのはやはりやるべきものじゃないらしい。
「千本桜、夜に紛れ――」




