俺の家での朝ごはんのひととき
「……きて、起きて」
俺は誰かに揺さぶられたような感覚に陥り、寝ぼけた眼を開けるとそこには空がいた。
なんで家に空がいるんだっけ……?
「久太くん。朝ですよ」
「……空? なんでここに……」
「えっと、私の家が焼けて泊めてもらってること忘れたの?」
「んああ……そだっけ……。ふああ……」
「まだ寝ぼけてるんだね。顔洗ってきたらいいよ?」
「そうする……」
ソファからゆっくり立ち上がり、洗面所にいく。
冷たい水を出して顔を洗った。寝ぼけた頭が冷水によって急激に冴えていく。そうだった。空がいるのは家が火事になったからだ……。
「そうだったな。忘れてたぜ」
どうやら寝ぼけていたみたいだ。
さてと。朝飯にでもするかな。
母さんが作った朝飯をほおばる。
今日の朝食は簡素に卵焼きと納豆だった。みじん切りにしたネギも入れて、ねばねばと混ぜていく。まぜまぜまぜ……。
辛子は必要だね。
「お母さん卵ないの」
「あるわよ。どしたの?」
「卵納豆にする」
「そう。冷蔵庫に入ってるわ」
瑞穂が冷蔵庫に卵を取りに行った。
俺は混ぜた納豆をアツアツのごはんにかける。
「そういえば久太くん。今日どっか行くの?」
「いや? 特にそんな予定はないけどどうした?」
「いや、なら今日会社に行かないかって。父さんの様子が心配だし」
「ああ、わかった。いいぞ」
納豆ご飯を食べながらそう答えた。
君清さんは会社に寝泊まりしてるんだっけか。
「あら、君清の会社にいくの?」
「そうだけど」
「なら行くとき漬物持ってきなさい。君清私の漬けた漬物好きなのよ」
「そうなんですか? なら渡しておきますね」
「頼むわね。君清も落ち込んでると思うし、元気づけてあげて。あいつ、ああ見えて結構繊細なの」
「わかります。意外と傷つきやすいですよね」
そうなのか? 俺の目の前では凛として構えてるんだが。
「そもそも君清って案外シスコンなのよ。私が北海道に来たから君清も追ってきたのよ?」
「それは初耳……。お父さんって親ばかとシスコンなんだ」
「まあ、母さんの事怖がってるし母さんを大事にもしてるってことはなんとなくわかってた」
だって俺に何かあると千代に殺されるとか言ってるし……。まあ、それでも多数の嫌がらせもされてるけどさ。
「あ、そういえばふと気になったんですがお父さんと千代さんって兄妹なんですよね?」
「そうよ?」
「でしたらなぜ一般の仕事についているのですか? うちの父さんのお姉さんならもっといい仕事につけたのでは……」
空がそういう疑問をぶつけると母さんは笑った。少し鼻で笑ったように笑った。
「ああ、私勘当されたのよ。久太と瑞穂のお父さんと恋してね。反対を押し切って結婚したようなものだからそうとう私のお父さん怒って。お前はもう西園寺家の名を語るな……っていわれたのよ。だから血は繋がっていても西園寺家じゃないのよ私。どう? 素敵なラブシーンでしょ」
「そういった理由が……。素敵です。はい。かっこいいと思います。やっぱり自分の好きな人と結婚するべきですよね」
「そうよ。空ちゃんも、久太が好きなら結婚してもいいのよ?」
「そっ、それは考えておきますっ」
結婚……か。
俺は確かにしたい。俺もそろそろ考えておこうかな。大学卒業したら結婚したいと思ってるけど……時期尚早なのかもしれないな。
というか、その時もプロポーズか……。一生に一度かもしれないし、なんか洒落たものでも考えることができたらいいんだけどな。




