高校の文化祭に来た③
今なら恥ずかしくて軽く死ねるレベルだ。
俺の女装を見られてしまった。しかも、隆たちに。恥ずかしい……。
「えっと、真面目に久太なんすか?」
「……あまりじろじろみんな」
「あ、あまりにも可愛すぎて俺惚れそうなんだが」
「むうう。これを見たらバレンタイン氏は何を言うか……」
隆たちは俺をまじまじとみつめてきた。
公開処刑されている。もういい。後は野となれ山となれ。俺を好きなだけ見るがいい!
「メイクもあるけど久太くんって女装結構似合うんだ」
「メイクの力ってすげえっす!」
「これ元がいいからありうるんじゃないか」
「ほほう。久太氏はイケメンでござるからなあ」
うるさいよ!
俺だって好きで似合うように生まれたわけじゃない! というか、イケメンはだれしも似合うというわけじゃねえぞ! 竜太郎は絶対に逢わないからな!
俺は単に可愛い系の顔つきだったからであってだな……。
「肌も色白いし、本当に女子になったらどうだ?」
「私よりも女子してるよね! いっそ私が男子だってことにしない?」
「しないわ!」
俺は男だ! だから女子にはならない。
俺は心も男。オネエというわけじゃない。だから女装だってあまりうれしくないぞ!
「久太氏はインドア派だから日焼けもないのでござるな」
「それでも結構運動してるから身は引き締まってるし」
「身長も西園寺とどっこいどっこいくらいっすからねえ。低身長が唯一の悩みっすよねえ」
「「「だからこんなに女装が似合うのか」」」
勝手に納得するな!
たしかに俺は家から出ないけど運動はきちんとしてるし、身長も低い……わけじゃなくて空が身長伸びたからだが、どっこいどっこいだ。
高校の時は俺だって空を見下ろしてたんだぞ! 空が伸びたんだよ!
空は165cmで俺は169cmだ。もう170cm行ってるっていってもいい。これでも5cm差はあるんだぞ。
「と、これ以上からかうと久太が怒るな」
「そうっすね。でも、冗談抜きで可愛いのは事実なんすよねえ」
「そうでござるな。二次元から出てきたみたいでござる」
うるさいよ。俺は可愛いって言われて嬉しくないんだよ。
隆たちと別れ俺は空と一緒に瑞穂のところにきていた。
瑞穂のクラスは劇をやるらしい。題材はロミオとジュリエット……ではなくすっぱい葡萄というものをやるらしい。すっぱい葡萄。俺は知らない言葉だった。
すっぱい葡萄か。どういうものなんだろうか。空なら知ってそうだ。
「すっぱい葡萄ってなんだ?」
「すっぱい葡萄っていうのはね、キツネがたわわに実った葡萄をみつけたけど高いところにあって届かないんだ。それでキツネは悔しくて「あの葡萄は絶対にすっぱくてまずいだろうから食べてやるものか」って言って去っていった物語だよ。イソップ寓話の一つだね」
「負け惜しみみたいなものか」
「そうだよ。英語圏ではサワーグレープスって書いて意味は負け惜しみっていうらしいね」
勉強になった。
じゃあ、その劇を見てみますか。
Sour Grapes:負け惜しみ
知らなかった人は翻訳でこの英文を打ってみてください。負け惜しみってでるはずです。




