高校の文化祭に来た②
とりあえず俺は席について待っておくことにした。
「じゃ、コーヒーおひとつ」
と、頼むも、店員さんは固まっていた。
「あのー?」
「あ、ああ! すいません! あまりにも可愛くてつい見惚れていました!」
いや、可愛くてじゃなくてね。
俺は可愛いって言われても全然うれしくないの。カッコイイのほうが嬉しいんだよ? というか好きで女子高生の格好してるわけないからね?
「コーヒーですね! かしこまりました!」
そういうと店員は去っていった。そして、同時に女子の黄色い悲鳴が聞こえてくる。
多分空だろうな。
「お待たせ」
「おう。おか……」
空の姿を見て、固まってしまった。
似合ってる。女性っぽさはあるし、宝塚みたいな雰囲気の女性となっている。髪をオールバックにして、中世の騎士のような恰好をしていた。
美人が男装したらイケメンになるのか……。
俺がもし女子だったら空に惚れていただろう。今も惚れてるけどさ。
「あの、そんな見られると恥ずかしい……」
「あ、ああ。ごめん」
つい見惚れてしまった。
あの、空さん。男装までそんな完璧にしなくていいんですよ? 俺以上にかっこいいじゃないですかーやだー。
……いや、笑えない。真面目に俺以上にかっこいい。女子だと可愛くて男子だとかっこいいって空はチート過ぎるにもほどがある。
俺の唯一の取り柄がなんだか失われた気分だ。
「えーと、すいません」
「は、はひっ! なんでしょう!」
「どけよ。注文は俺が聞く!」
「何言ってんの、あたしよ!」
「僕が聞く!」
「は? 俺が聞くんだっつの」
と、なんだか言い合いが起きていた。
なんかすごく嫌な予感がするんだが。
「こんのっ! じゃあ決闘だ! だれが注文撮るか勝負だ!」
「望むところよ!」
なんか決闘騒ぎになってる!? 誰でもいいから注文とれよ!
と、参加してない人がいて、その人が俺らに近づいてくる。
「お待たせいたしました。こ、コーヒーでございます」
と俺のやつをはこんできた。
それをみた三年生は、茫然とその子を目で追っていた。
「ふっ。私の負けのようね。すでに取られていたわ」
「しゃあない。俺らは引くとするよ。悪かったな」
「いえ、こちらこそごめん」
なんかいい話っぽくしてるけど全然いい話じゃねえよ。
そして、俺らは女装男装を続けたまま校内を歩き回っていた。
メイクしたのにすぐに落とすのはもったいないと空が言ったため、メイクを落とすのは学校祭が終わる前に。
その間、俺はこの黒歴史のまま歩かなくてはならない。これを知り合いにでも見られたりしたら……。
「ん? あれ、西園寺氏ではござらんか!」
「おろ、西園寺か。なんでそんな恰好をしてるんだ?」
「すげえ。かっけえっす!」
げえええ!? お前らも来てんの!?
というか、お前ら来るような人間じゃねえだろう! なんで学校祭いるんだよ!
「さっき女装男装喫茶に行ってきたんだ。男装したまま出てきたんだよ」
「そうなのか。……かっこいいな」
「で、こちらの子は連れてきたんすか? 従妹さん? 西園寺に似たのか可愛いっすね。でもこの顔どこか誰かの面影があるような……」
俺をじろじろ見るな光。やめろ、恥ずかしいだろ。
「あれ、そういえば久太氏は? 昨日誘ったら久太氏は西園寺氏とまわるとかいってたでござるが」
ああ、そうだ! 昨日言ってた! 確かに誘われたけど……。でも文化祭に誘われたとはわからんわ。俺は用事があるって言って断ったから……。
で、文化祭に言ってくるといったから今ここにいるんだけど……。
「久太くん? 来てるよ」
「ほほん。どこにいるんだ? 西園寺をほっぽりだしてなにしてんだあいつ」
「どこって……この子だよ?」
と、空は俺を指さした。
やめろ、見るな……。
「「「えええええええ!?」」」
「見るなああああああ!」
空は実は女の子も好きです。百合ではなくて。百合属性なんてないですから。女装させるのは久太だけですから。




