高校の文化祭に来た①
懐かしい光景が並ぶ。
俺は、俺らが通っていた高校の文化祭にお邪魔していた。前は八月くらいに行われていたのだが今年から日にちが少し後になったらしく今の時期になった。
約一か月くらいあとになっただけなんだけどね。
「えっと、クラス展示は定番のメイド喫茶とかもあるのか」
文化祭といえばメイド喫茶だ。
「見てみて。女装男装喫茶というのもあるよ。どうやらここではお客さんも女装と男装するらしいね」
「へえ。すげえな」
「行ってみようよ! 私もう一回久太くんが女装した姿見たいし!」
「ええ……。あれ何気に恥ずかしいんだけど」
「私のわがまま……許してくれない?」
と、涙目で頼んできた。
まったく。その程度で動かされる俺だと思っているのか。なめられたものだ。石みたいに堅い意志を持ってる俺にそんなものが通じるとでも? 効くわけないだろう。
「ありがとう! 私のわがまま聞いてくれて!」
あれれ、おかしいな。体が勝手に女装男装喫茶に向かっていったぞ。
「じゃ、中に入ろうか」
俺は空に腕を引っ張られて中に入っていった。
中に入った俺らは少し話題になった。
「小鳥遊先輩に西園寺先輩。来てくれたんですか?」
「あ、ああ。うん。暇だったから」
そういえばここは三年のクラスだ。つまり俺らの学年の一個下。もちろん俺らのことは知ってるだろう。
「うわあ、ずっと遠めから眺めてるだけだったけど間近で見るとこんなにかっこいいんだ……」
「ありがとう」
「ねえねえ、君。ここは女装と男装ができるって聞いたんだけど」
「ああ、できますよ! 希望する方は二百円を払ってもらえるとメイク室を貸します。そして、我々がメイクをして衣装も貸し出します。小鳥遊先輩と西園寺先輩もするんですか?」
「うん。私は男装して久太くんに女装させるんだ」
「本当ですか! 今からみんなに伝えてきますのでちょっと待っててくださいね!」
その店員さんはいそいで伝えに行くとなんだかぞろぞろと来て俺らをメイク室まで連れて行った。
俺のメイクは空がするといって俺はメイクを施される。なんだかモデルになった気分だけど、女装するだけだ。
この三年生に囲まれてメイクをされるって結構恥ずかしい。思わず動いてしまって空に叱られることも多かった。
そして、メイクが完了し、衣装を着た。女子高生の制服を着たのだが。
「……すげえ。可愛い」
「西園寺先輩みたいに可愛い……」
そう。鏡を見て感じたが、可愛くなっていた。
もちろん俺は抵抗はある。恥ずかしいし、可愛いって言われるのは腑に落ちない。だけど、空が喜ぶならいいかな……。なんて思い始めている。
「じゃ、久太くん。私も男装するから……その、少し出て行ってもらえるかな。自分がメイクしてるとこ見られるの恥ずかしいんだ」
「あ、お、おう」
俺はスースーするスカートをはきながら出ていった。




