梵と同種の人間
講堂で俺の席をいち早く確保し、その隣に梵が座った。
いつもの隣だ。この隣には村上が座るようになったが。
俺の周りに座るのはいつも女性ばかりだ。だから、同性のやつらからはそれなりにヘイトを買っていると思う。今もなんだかみられてるし。
大学に入ったらモテるだとか、そんな甘い考えはいけないのだよ。
それは絶対にないから。大学デビューかっこいいとか思ってるやつらに一言いうけど、デビューは失敗のほうが多い。ソースは特にない。
「ククク。汝、妾の質問に答えよ」
と、いきなり隣から言葉が聞こえる。
梵は相変わらずだ。
「汝は、同種族の人間と友好の契りを交わしたいか?」
「突然なんだよ。まあ、男の友達は確かに欲しいけどさ」
今のところ女性しか友達じゃない。男性の友達はゼロだ。ゼロから始める大学生活みたいなものだよ。なにそれ。俺ってタダでさえ友達作ることが苦手なのに。
「そういえば小鳥遊さんが男性と話しているところって見たことありませんね。あって結城さんだけでしょうか」
「もしかして男の子の友達がいない?」
吉祥が面白がってそう言ってくる。事実なので否定ができない。
「そうだねー。まあ、私らも好きで話してるからねえ。近寄りがたいのかもね。これっていわゆるハーレムじゃん」
「俺は望んでないけどな」
「ふふふ。でもかっこいい人はいつの間にかハーレムを築くものだよ」
「なにそれ。どこのラノベ?」
ラノベ主人公ならわかる。異世界に転生して女の子を救って恋をする。それが今どきなのだ。チート能力を行使して女の子を助けるなんてありふれている。
俺としては弱いものが頑張って強いものに立ち向かう少年漫画的なものも悪くはないと思ってるが。
「小鳥遊君は外見チートで成り上がってる最中だよね」
「その通りだから何も言えない」
「ちー……と?」
「ふはははは! 妾にとって不正など無きに等しい!」
そうですか。もうこいつらには外見チートなんて使えないようだ。
「っと、もうそろ始まるから静かにするか」
と、講義を受けて講堂からでたときに誰かに押し倒された。
お、女の子? それも、髪が真っ白で華奢な可愛い女の子に俺は押し倒された。
「あ、あのー、俺を押し倒してどうしたの?」
「ふふん」
「あ、あのー?」
「ふふん」
さっきから呼びかけてもふふんしか言わない。俺が諦めて力づくで退かせようとしたときだった。
「汝。妾の友人の上から降りよ。さもなくば天罰が下るだろう」
梵がそういうと。
「天罰なんて天使である私の前では無意味だわ。神様に愛されている私には天罰なんて与えられることはないよ」
といいだした。
なんだろう。この違和感。もしかしてこいつって梵と同種のやつなんじゃないだろうか。
となると、また面倒なのに絡まれた……というわけになるのか?




