村上家の兄妹②
「きゅーた。おててつなご」
「はいはい」
俺は村上の幼稚園の妹である茉莉ちゃんに手をつなぐことをせびられ繋いでいた。
茉莉ちゃんはとてもご機嫌である。左手では俺と手をつなぎ右手は買ってあげたアイスを持っていた。おい、溶けてる溶けてる。
「あまーい」
「そうだな」
俺も左手に持ってるアイスをなめる。
俺はチョコミントを選んだ。オーソドックスなバニラを選ぼうとしたがチョコミントが美味そうだったからチョコミントにした。
くう。美味い。
「きゅーた。ひとくちたべう?」
「いいのか?」
「うん。きゅーたにならあげう」
まだラ行の発音がうまくできていない。可愛い。
俺は差し出してきたバニラアイスを一口食べる。美味しい。バニラの濃厚な甘みが口の中を広がっていく。
「……で、あいつらどこいったんだ……」
現実を見てみよう。
迷子になった。この歳になって。
俺はふらふらとどっか行きそうになった茉莉ちゃんを監視していたらいつの間にか俺もはぐれてしまった。まあ、携帯で連絡すればいいだろうと思ったけど……。携帯は家に忘れてきたんだったってことを思い出した。
まあ、詰んだ。
「おねーちゃんたちまいごになった」
「違う。俺らが迷子になった」
「まつい、まいご?」
「ああ。迷子」
そういうと、茉莉ちゃんは泣き出してしまった。
うわあああんと大声で泣きわめく茉莉ちゃん。俺はアイスを口にくわえ、抱っこしてあげた。
しゃ、喋れない!
俺は周りの人にすいませんと頭を下げながら一目のつかないところに行った。
茉莉ちゃんを下ろし、アイスを急いで食べる。
……茉莉ちゃんのアイス、どっか落としてきちゃったか。
「茉莉ちゃん。泣くなって」
「まつい、まいごぉ」
「俺もいるから。一緒にお姉ちゃん探そう」
「……さがす?」
「ああ。はぐれた村上……。お姉ちゃんたちを探そうっか」
「……うん」
泣き止んだ。
子供って泣きやむポイントとかよくわからないからなあ。
俺は疲れて寝てしまった茉莉ちゃんをおんぶしながら探していた。
すると、一階のトイレの前に吉祥を発見してかけよっていく。
「吉祥」
「あ、見つけた!」
吉祥は俺に駆け寄ってくる。
「心配したんだよ。小鳥遊君。と、まつ……。ああ、寝ちゃったんだ」
「疲れてな。で、他の奴は?」
「……それが」
と、吉祥は事情を話し始めた。
どうやら吉祥も迷子らしい。携帯は前地面に落として画面が割れたってことで使えないらしく、連絡手段がないとのこと。
俺もない。あらたに迷子メンバーが加わった瞬間となった。




