自由人、西園寺の母②
空のお母さんの名前は雲っていうらしい。
「小鳥遊君は空とどこまでいってるの? もう経験はしたのかしら。してないのなら避妊はちゃんとするのよ!」
「ぶっ!」
と、自由気ままな発言をしている。隣に座っている君清さんはこめかみを押えていた。
「私と君清さんでや」
「こほん。雲。それはおいておいてだ。私はおなかが空いた」
「あらー、欲しがりさんねー。今作るわ!」
といって去っていった。
去っていったあと、君清さんが大きくため息を吐いた。
「昔からああいう性格でな。疲れる……」
椅子にだらーってもたれかかりながらそういった。
たしかに雲さんみたいな人と夫婦なら疲れるだろうな……。俺の第一印象は自由気ままに生きていると思ってる。空でさえ手を焼いているほどだ。自由すぎるのだろう。
「あれでも家事は万能で、純粋な性格をしている。結婚したのも親が決めたのだが、まあ、あちらの親は厄介払いをしたかったのだろうな。結婚してからその理由がわかったよ」
「体力無尽蔵で、人を振り回す……。タチ悪いよ……。疲れた……」
「心中お察しします」
うわあ。悲惨。
あの自由な母を持った空も結婚した君清さんも辛そうだなあ。
「多分私は空もあの性格を受け継いでいたら会社なんて放り出して国外に逃亡している」
「だよね……」
わかる。ああいうのが何人もいたらノイローゼになりそうだ。
「まあ、美人だし付き合っていて楽しいという気持ちもあった。好きになると辛いと思ってたことが楽しくなるものだよ」
好きなものには愛着がわくと同じようなものなのかな?
「でも、さすがにそれも限度ってものがね……。ちょっと休んでくる」
といって君清さんも出て行ってしまった。
ここにいるのは雲さんが雇った使用人と空と俺のみ。ちょっと気まずい雰囲気だ。
「久太くん。お母さんの料理が終わるまでなにかしてよっか」
「そうだな。なにする?」
「うーん……」
と悩んでいると扉が盛大に開かれた。
そして現れたのはなんと佳だった。
「遊びに来た! 空姉ちゃん」
去年と比べてギャルっぽさも増した佳だった。
金髪でメイクもばっちし決まってるし何より背が伸びた。成長期にでも入ったのか?
「っと、久太もいんじゃん。おひさ」
「おう。久しぶり」
佳が俺の隣に座った。
「あ、そうだ。久太、空姉ちゃん。私ね、今度ドラマの主演を演じることになった」
「そうなの? じゃ、録画しとかないとね」
「なんて番組なんだ?」
「”世界の真ん中で愛を叫ぶ彼女”というドラマ」
「あ、それ有名なやつだよね」
たしかそのドラマって今度の日曜から放送されるはず。
その主演って……。何気にすげえな。たしかに最近テレビで佳らしき人を見かけていたけどあれって佳だったのか。
「ふふん。私は女優になったんだ。それを報告しがてら遊びに来たの」
「へぇ。すごいね。佳は芸能界に入ったんだ」
「うん。目立つの好きだし。それに、自慢じゃないけど私こう見えても演技力とかはあるから」
「自分でいうな」
俺はおでこを小突いてやった。すると
「いったぁい。やめてよ、お兄ちゃん」
涙目でこちらを見てきた。
演技力すげえ!!




