海へ行こう!⑦
短くなってしまいました。
「今日は目いっぱい楽しめたぞー!」
車で移動している。海でひとしきり遊んだので俺らは帰る道中だ。
吉祥はさらに黒くなっていて、梵さん……梵は肌がひりひりするらしく触られるのを拒んでいた。
「悪いな、運転代わってもらって」
「大丈夫大丈夫。今日のお礼お礼」
運転手は結城だ。俺が運転しようとしたのだが、自分のせいで疲れてるだろうと言って結城が変わってくれたのだ。それは嬉しく思っている。
ちょっとは信用してもいいのだと、そう思えてきた。
「まずは誰の家行くんだい? 俺西園寺さんの家と吉祥さんの家とか知らないよ?」
「私たちは駅でいいよ」
「私は結城さんたちが下りた後にこの車返しに行くので大丈夫ですよ」
「はーい」
結城は札幌まで飛ばしていった。
「楽しかったね、海」
結城もおり、俺が運転手となっている。
助手席に座った空がそう言ってきたのだった。
「ああ。楽しかった」
弁当取られたりとかしたけれど、楽しかったと思う。何より海での収穫は結城に怒った事なのではないだろうか。
ただ、心配なのは俺が空を束縛してもいいのかということだ。この問題は、いまだに解決していない。
「……あのね、今日、嬉しかったよ。私の弁当取られて怒ってくれて」
「嬉しかったのか?」
「うん。それほど大事にしてくれてるんだなーって思えたんだ」
そ、そういう考え方もあるか。
束縛しているというわけではなく、大事にしているという考え方もあると言える。そういう考えでいたほうが気楽でいいのかもしれないな。
「だから、また好きになったよ。……こ、こういうのもなんだけど、私ってやっぱ久太くんのことが大事みたい。殴られても、貶されても、何されても好き……になれると思う」
「俺は殴ったりはしないよ? 貶しもしないし」
「わかってるよ。たとえ話。私は心の底から久太くんが好きなんだなーって、実感できたという話だよ」
空は笑った。照れ隠しのためなのか、笑顔がとても引き攣っている。恥ずかしい思いを隠して今は無理やり笑ってるんだろう。必死こいて笑っている。
俺はそれに思わず「ぷっ」と噴き出してしまった。
「な、なに笑うの?」
「照れ隠し下手だなって思っただけだよ」
「そ、そんなに顔に出てるの?」
「わかりやすいほどに」
何でもできると思ってたけど照れを隠すのは下手らしい。ただ、弱点というには可愛すぎるものであるからして、このことから導き出される答えは空は可愛いということだ。Q.E.D.
これで海は終わりかな……。夏休みはまだ続くかもしれませんが。
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