俺の家にメイドがいました
「ふあーあ……」
目が覚めると机に向かっていた。
そうだ。昨日、アニメ見ようとパソコンに向かってそのまま寝てしまったんだ。寝落ちするとは……。というか、アニメも途中で止まってるし。
……途中で止まってる?
少し疑問に思ったが気にしないでおく。
「顔洗いに行くか……」
寝ぼけた眼を擦りながら下に降りていく。
洗面所に行き、ドアを開けた。
「お、おかえりなさいませご主人様~」
「おかえりなさいませ。ご主人様」
そっと扉を閉めた。
何かの見間違いだ。きっと寝ぼけてるんだ。瑞穂と空が鏡の前でメイドの練習しているなんてきっと何かの間違いに違いない。
寝ぼけてるんだ。まだ。はは。こりゃダメだ……。
さて、顔でも洗って寝ぼけている自分の眼を覚まさないとな。
「ち、違うの久太くん。これは」
「瑞穂の話を聞いて!」
と、メイド姿の二人に押し倒された。
原因は昨日見ていたアニメ「秋葉のヲタクがメイド喫茶のメイドさんの力で無双するお話だにゃん」というものだった。
そのせいで俺がメイドが好きということを勘違いしてメイドの練習をしていたらしい。
どうりで……。
「途中で止まってるって思ったらお前ら見てたのかよ……」
「兄さんの漫画を借りようと部屋に入ったらパソコンの前で寝ているのが見えて……。気になってみたんです」
「そのとき私も来て一緒に瑞穂ちゃんとみてました」
で、メイド服をわざわざ取り寄せて練習してたの?
「兄さん。空さんのメイド可愛いでしょ? 瑞穂も最初見惚れたんだよー」
「あ、ああ」
たしかに、似合ってる。黒髪清楚系メイドか……。
似合ってる。流石空というべき以下似合ってるな。
「じゃあ兄さん。瑞穂たちの練習の成果を見て!」
「練習の成果ぁ?」
もしかして鏡の前でしていたやつか?
「空さん! やりましょう!」
「ええ!? い、今、やるの?」
「せっかく練習したんです! 無駄にはしないようにしましょう。安心してください。瑞穂も恥ずかしいので痛み分けになります!」
「そ、そんな無理しなくていいぞ?」
空が恥ずかしそうにもじもじとして、瑞穂は立ち上がった。
瑞穂って勇気とかは無駄にあるからな……。恥じらいはあるにせよやるといったらやる凄味があるのだ。
「よーし、まずは瑞穂からやりまーす!」
と、瑞穂は右手を上げて宣言してきた。
「ふぅ……。おかえりなさいませ、ご主人様~」
と、手でハートマークを作り俺を見てくる。
こ、こういうときってどういう反応すればいいの? か、可愛いとでもいえばいいの? わっかんねえ! 知らないやつならまだしも身内にはどう反応したらいいのかわかんねえ!
「か、可愛いんじゃないでショウカ……」
「なんで最後片言なの!?」
う、うん。可愛いよ。
「じゃあ次! 空さん!」
「ええ!? まだ心の準備が……」
「はい! 兄さんが来店しました!」
「ええ!? お、おかえりなさいませご主人……様……」
どんどんしりすぼみになっていく言葉。俺は、知らぬうちに傅いていた。
「はっ。ただいま戻りになりました。今宵のメニューは何でしょう」
「瑞穂と反応がちがーう! 兄さんもっと瑞穂を大事にしてよ!」




