空との夏祭り②
浴衣姿の空と祭りを回っていると……。
「ふむ、奇遇だな。汝たち」
「あれ来てたんだ」
と、黒沢姉妹に出会った。
黒沢姉妹は私服で来ており、ゴスロリの格好とラフな格好をしている。梵さんの片手には綿あめを持っていた。
「ふはははは! 汝の魔力が途切れたと思えば生きておったか! 悪運が強い奴よ!」
相変わらずうるさいな……。
「梵。うるさい。で、空ちゃんと久太くんは祭りデート?」
「うん。そうだよ」
「あ、そうなの。ごめんね。邪魔してるでしょ」
「いや! そんなことは!」
空が否定する。
「っと、そうだ。これ、あげるよ二人に。売ってあったんだ」
と、禊さんが何かを手渡してきた。
お守りのようだった。恋愛成就と書かれたお守り。ピンク色のお守りを手渡してきた禊さんは仲良くねと言って去っていった。
恋愛成就のお守り。効果あるといいな。
黒沢姉妹が去っていき、屋台でたこ焼きを買ってテーブルに座って食べていた。
作って間もないたこ焼き。その一つを口に運ぶ。
「あっつい!」
作りたては熱かった。
「美味しい。祭りの雰囲気もあるけど美味しいね」
「はふはふ」
熱くてそれどころじゃない……。
俺はあまり噛まずにたこ焼きを飲み込んだ。胸やけを起こして、少し悶えた。
「久太くんお茶どうぞ」
「ご、ごめんな」
空からペットボトルのお茶をもらい、飲む。
少し楽になった気がした。
「ふぅ……。熱かった」
「そうなんだね。久太くん涙目になってるし」
いつの間にか涙が出ていたようだ。
俺は涙をぬぐう。そして、口の中を覚ますように呼吸を少し早めた。風で口の中の温度を下げようと思っている。無駄かもしれんがね。
「今度は少し冷ましてから食べよっか」
「そうだな……」
もう胸焼けして悶えるのはやめておきたい。
俺らは、たこ焼きを閉じ、不意に真上を見上げた。夜空の星が輝いている。とても、とてもきれいに輝いている。
「付き合って二年は経ったんだね、私たちって」
「高校二年の時からだったっけか。よくここまで続いてるよな」
思い出してみれば、俺が髪ぼさぼさの少し不潔感が漂う男子だったのがいきなりイケメンになった。最初は隆たちと少し喧嘩して仲直りして……。そして文化祭の時には会長に出会って、そして盛大に会長を送り出して。
そして、三年生に進級して、入院して……。いろいろあった気がする。
二年間のうちに様々な敵と遭遇した。本宮、三橋、三潟。本宮が特に害悪だったな。
俺としてはまだそれがあったのは三か月くらい前にしか感じない。時の流れというのは案外早く進むものらしい。
「そうだね。祥太郎の件とかあってたしかめあえたんじゃないかな」
「そうだな。それに関しては感謝しないとな。本宮に」
本宮がしたことは最終的に俺らを縮めることになった。本宮としては望んでいないのだろうが、俺らからしたら嬉しい展開になったと思う。
「……なんか、私が助けられてばかりの記憶しかないよ」
「……大体空を狙ってきたからな」
本宮は俺を標的にしていたが空を人質にしていたようなものだし、三橋は俺と空の仲を引きはがそうとしたし、三潟は俺と婚約を結んで空から奪ったし。
どれも空を傷つけた。俺も傷ついたが、俺は助けられるようなものはない。
「はは。私と久太くんを引き裂きたいって……。久太くんはやっぱ人気者だね」
「ああ。そうだな」
まったく。人気者は辛い。




