空との夏祭り①
君がいた夏は遠い夢の中。
そういう歌があった。夏祭りという曲だ。
「夏祭りぃ!」
俺は、夏祭りに参加していた。
人でごった返す夏祭り。
さっぽろ夏祭りというのに参加している。北海道といえば冬に行われるさっぽろ雪まつりが有名だが、こちらもこちらで結構有名である。
でもまあ、雪まつりのほうが有名なのは北海道は雪というイメージと寒いというイメージがあるからだろう。
雪の多さでいえば新潟とかのほうが多いのだ。ただ、こっちは寒いだけ。
「空の浴衣姿……。楽しみだなあ」
空と一緒に来る約束をしていて、空は浴衣を着てくるといった。
楽しみだ。どんな浴衣なのだろう。薄いピンク色の浴衣? それとも花柄の可愛い奴だろうか。それとも……。
いろいろと想像がはかどる。空の浴衣姿。きっと美しいに違いない。
「おまたせ!」
空が走ってくる。
お、おおう。空は水色の浴衣を……。そっか。空色だもんな。
「久太くんも浴衣で来たんだ」
「空が浴衣で俺が私服っていうのもなんかね」
「グレーの浴衣……。渋いね」
「だろ? まあ、これ父さんのやつなんだけどさ」
押し入れから父さんの奴引っ張ってきただけ。背丈が同じくらいなのが本当に腹立つ。
「まあ、いこっか。空」
「う、うん」
と、空は手を差し出してきた。
俺もその手を握る。空の手は暖かかった。
空の手のぬくもりを感じながら祭り会場を歩く。
俺は射的によった。
「射的か。やっていいか?」
「うん。やろっか」
「あいよー。大人五百円ね」
「俺と空やるから千円でいいか」
俺はおじさんに千円を渡した。
玉を五発もらう。空も銃を手にしてコルクの玉を銃の先っぽに詰めていた。
うーむ。俺の狙いは中段にあるあのキャンディとミルクキャラメル。ぬいぐるみとかは落とせそうにないから諦めよう。
身を乗り出して、狙いを定める。今の俺はゴル〇という気持ちで……。外す気はしない。
撃つぞ!
ポンっ
気の抜けるような音で発射されたコルク玉は、キャラメルに当たることはなかった。
……死にたい。なにが〇ルゴだよ。似非者じゃないか。
「くそ、もいっぱつ」
今度こそ狙いを定めて……。標的を絶対に仕留める。今度こそ、狙い撃つ!
現実は非情である。
あれから、全部外した。その上、空にキャラメルを取ってもらう始末。
空は、四つの景品を手にしていた。キャラメル、ゲーム機、ぬいぐるみとドロップ。どうやって撃ち落としたのか知りたくなるレベルの物。
ゲーム機とぬいぐるみはすげえ……。射的のおじさんちょっとがっかりしてたぞ。
「射的楽しかったね。次は何しよっか」
今度は屋台のおじさんも満足できるような奴にしないとな……。




