京都で過ごす夏休み⑤
短いです。すいません
肝試しから帰還して、家でそろそろ寝る時間となった。
俺は持ってきた小説を読んでいると電話がかかってくる。発信元は隆だった。
「はいはい。なんでしょう」
『久太氏!ほんっっとに悪いのでござるが頼みがあるのでござる!』
電話口から聞こえてくる大声に少し怯みつつ俺は要件を聞くことにした。
『京都にアニライトがあるのはご存知だろう?』
「ああ、たしかあったな」
『拙者の好きなアニメもご存知であろう?』
「魔法少女ミミカルあろはだっけ」
『そう!で、京都のアニライトに明日の早朝並んで欲しいのでござる!』
並ぶ?何か買ってほしいものでもあるのだろうか。
『明日、関西限定発売のあろはの魔法少女ステッキ☆が発売なのでござる!しかも限定版はとてもレア!限定版にはあろはEXのステッキが付いてくるのでござるぅ!』
「ああ、それを買ってくりゃいいんだな?」
『頼むでござる!オタク共が早く並ぶでござろうから、一時くらいから並ぶのがいいでござるよ』
「結構早え…ってもうちょいじゃねえか!』
もう少しで一時になる。
やべ、いかねえと!俺は財布を持ち、電話を片手に走り出す。
ここからアニライトって結構距離があるけど、仕方ねえ。
「もし買えなかったらごめんな」
『拙者が頼んだんでござる。恨むことはないでござるよ』
「わかった。切るぞ」
『武運を祈るでござる』
電話を切り、ポケットにいれる。
そして俺はそのまま走り出した。
で、並んでやっと七時間時間五十分が経った。
アニライトは9時オープンだ。一時に並んでいる俺はとても眠いけど並んでいる。
行列の結構前に並んだ。一番ではない二番目に。一番目は中学生くらいの女子だった。
前の少女はワクワクしながら並んでいる。
そして、もうそろそろオープンだという宣告があり、アニライトが開いた。
俺たちはちゃんとゆっくりと中に入っていく。そして、ステッキを手に取りレジに並んだ。
「二千八百円になります」
「へ!?」
前の女の子はなにやら慌てていた。
「ひゃ、百円足りない……」
どうやら予算オーバーしてたみたいだ。
少女は慌てている。予算オーバーしてるため払えなくなっているらしい。
ああ、早くしてくれないかなあ。
俺たちが少し不機嫌な目で見ているのがわかったのか少女は焦る。
……欲しいけど買えないのに葛藤してるのか。
しょうがない。
俺は財布から百円を取り出した。
「ほら、あげるから早く買って」
俺は少女に百円を手渡した。
少女は俺のあげた百円をぎゅっと握りしめる。
「あ、ありがとうございます!」
と、礼をして買っていった。
そして、俺もステッキを買い、外に出るとその女の子が待っていた。ステッキを握りしめて。
「さ、先ほどはありがとうございました!お、お金はきちんと返すので、明日か明後日会えませんか……?」
「返さなくていいよ」
どうせ百円だし。
バイトもしてるから金はあるほうだからね。お金には今の所困ってないから返す必要はない。
「で、でも」
「気にすんなって。ボランティアみたいなもんだって受け取っておいて」
気にする必要はないんだ。
だから返してもらわなくても……。
っと。電話だ。
「ごめんね。……はいもしもし」
『久太くん今どこにいるの!?』
「あ、今アニライトにいる」
『なんでいるの!?そこに』
「隆からの頼みで限定版のステッキ買いに来たんだ」
『そ、そうなの。いきなりいなくなってたから心配してたんだよみんな。佳なんか外探しにいっちゃった』
「ああ、ごめんな。心配かけて」
そうでした。なにも言わずにでてきたんでした。
そりゃ心配されるわ……。
とりあえず早く帰ろう。
「じゃ、俺はここで。じゃあね」
少女に手を振って帰っていった。