閑話 空の会社の様子
日曜日のある会社。
会社内では気持ちよく鼻歌を歌っている空がいた。
「なっつやすみーは久太くんと遊園地~」
スキップをしそうな勢いである。
それを後ろから見ている社員たち。微笑ましく見ている者が多数であった。
「空ちゃん相当浮かれてますねえ」
「遊園地とか言ってたから久太くんと遊園地デートする約束でもこぎつけたのでしょうね」
「いいなあ。俺もああいう彼女欲しい」
微笑ましい光景で目を奪われた。
恋する女性は美しく見えるというがまさにその通りである。
「可愛いなあ……。俺の娘なんてもう反抗期だぞ……」
「私の息子も不良に……」
「大学デビューとかしない空ちゃんはさすがだね」
ただ、空が浮かれていて問題となったのは仕事である。
いつも空ができていたことができなくなっていた。ポンコツと化してしまった。何もないところですぐ転ぶわ、階段から転げ落ちるわで。
見ていた社員はハラハラしていた。
「不注意にもほどがありますよ」
「そ、そうですか……。す、すいませ……えへへ」
空はにやけるのを隠しきれなかった。
注意されてもなおにやけている。それほど嬉しかったのだろう。だけれどそれをみた社員はちょっとイラっと来たのか。
「社長を説得して遊園地デートをなくしてもらおうかな……」
それを聞いた空はにやけるのがとまった。
「や、やめてください!」
「ならきちんとしてください。楽しみなのはわかりますが……」
「は、はい」
怒られてしゅんとする空であった。
「さてと。キャラ班のみんなに通達だ。来週の日曜、暇なやつはいるか」
「え? 俺暇ですけど……」
「私も、ひ、暇です」
「私も暇ですよ」
「俺も、何も予定ないっすねえ」
ゲームキャラ班のブース。
浦和さんがなぜかそのことを聞いてきた。日曜は暇化という質問。みんな真面目に暇だと答えた。
「まさか出勤ですか? つら」
「仕事だけどそんなにつらくない仕事だぞ?」
「なんですか、その仕事。辛くない仕事なんてこの世にないんですよ」
「きりっとした顔でいうな……。まあ、本当に楽な仕事だ。日曜に私と一緒に誰か遊園地に行かないかということだ。もちろん会社の経費で」
浦和さんに頼まれた仕事。
それは空と久太の監視だった。遊園地での様子を報告してほしいと先ほど君清から連絡があった。なぜ頼んだかは、君清が忙しくて行けないから。君清は泣いていたという……。
「ふーん。俺はパスです」
「俺もパスっす。日曜はゆっくり休みたいし」
「あ、あの。私でよければ……い、一緒に行きます」
「そうか! よかった。ありがとう近藤さん!」
「い、いえ。浦和さんのお役に立てれば幸いです」
気の弱い近藤さんが行くと引き受けた。
実はというと近藤も遊園地にはいきたかったという気持ちがあったのだが。まあ、それはおいておいて。
「それでどういう仕事なんでしょうか。会社の経費で遊園地なんて普通はあり得ませんよね……?」
「しかも給料が出るからな」
「まじっすか!? 俺やっぱ行くっす!」
「俺も行く」
「給料が出ると聞いて飛びつくな。あと悪いな。このチケットは二人用なんだ」
「ええ、いいじゃないですか! 女性二人で行くより男女で行ったほうが! どうせ浦和さん彼氏いないんですし」
男の人……もとい安土は殴られた。
「独身で寂しいだろうから男の俺が行ってだな」
男の人……もとい井出も殴られた。
浦和さんに独身だとか彼氏ナシは禁句である。
「仕事の内容はだな」
「あ、あのー……」
説明しようとした浦和を遮り近藤が殴られた安土と井出を指さす。
「だ、大丈夫なんですか? しょ、傷害とかでは訴えられたり……」
「大丈夫だ。おふざけだしな」
「おふざけでこんな痛いパンチうたないっしょ普通……」
「普通という概念が通じると思わないほうがいいぞ安土」
「そ、そうだな井出……」
二人はその場に倒れた。
「じゃ、仕事を説明するぞー」




