瑞穂のお泊り会②
今、俺は生垣さんと瑞穂を車に乗せている。
本免許もすでに取得はしているので、車は運転できるんだが。まあ、こういうのって慣れないよ。
「事故らないでね?」
「いまだに取り立ての奴に何を言うか」
怖いぞ。というか、目的地ってどこだよ! 札幌市内を延々と回っているつもりか!
「目的地を早くいえ! こちとら怖いんだよ!」
瑞穂ならまだしも……生垣さんまでのせているから事故れないんだよ!
身内ならまだいいんだってのもおかしいけど、人様の子に何かあったらと思うと怖いんだ。
「うーん。とか言っても私たち行きたいところない……」
「ならなんでドライブしたいって言ったし」
「兄さんの練習になるかなって思って」
余計なお世話だよ。
「ほら、肩の力抜いて」
「あのなぁ……」
瑞穂はふざけたようにわらう。それがちょっとイラっと来たけど、瑞穂ナリの優しさなんだなと思うと結構優しい気持ちになれる……ような気がする。
まあ、瑞穂見てれば気楽に行けるかもしれないな。肩の力を抜いたほうがいいのかもしれない。
「わかったよ」
俺は肩の力を抜いて、車を動かす。
「お前らが行きたいとこないんなら俺の行きたいとこいくけどいいか」
「大丈夫だよ」
「はい。大丈夫です」
俺の行きたいとこ……つっても瑞穂たちにはつまらないところかもしれないけどな。
俺らがきたのは空の会社だった。
バイトのシフトは入ってないけど、見学がてらに来たのだ。まあ、近いうちに来るようにと君清さんに言われたからそのついでに。
俺は受付に行き、俺の名前を告げると案内される。
俺のことも随分と知れ渡っているのか廊下を歩いていると挨拶が飛んでくる。ちょっとむず痒いけどね。
それに、からかってくる人もいる。
「今日は空ちゃんじゃなくて違う女の子なのかい?」
「まさかの浮気ですか? 久太おぼっちゃま」
空の会社で働く女性社員さんだ。
俺はなんかいいおもちゃにされている。
「違いますよ。俺の妹と友達で……」
「なるほど。妹役と友達役と……」
「違います!」
「わかったるわよ。久太くんは空ちゃんを裏切るわけないもんねえ」
ニヤニヤ見てくる吉田さん。
俺はその場から逃げるように生垣さんと空の手を……。
……空?
「空あああ!?」
「ふふ。ドッキリ成功」
空は微笑ましく笑った。
ほんとにびっくりした……。瑞穂かと思ったら空だったんだもの。で、瑞穂はどこに行ったんだよ。
と、生垣さんの視線が生垣さんの後ろに行く。みると瑞穂は生垣さんの後ろに隠れていた。こいつ、知っててやったのか!
「久太くんが会社に来たって瑞穂ちゃんから連絡がきて急いできたんだよ」
「……瑞穂」
「ごめんね。あ、空さん! 私たち二人で会社見学してますんで」
「あ、おい!」
瑞穂は生垣さんの手を取り走り去っていった。
「……久太くん。お父さんに話があるんでしょ?」
「まあ、呼び出されたからな」
「じゃ、一緒にいこっか」
空は俺の手を握った。
お泊り会という名の会社訪問




