ラノベ主人公①
臼田先生に愛について語られて、俺は家に帰っていく。
愛……か。恋と愛は違うって先生は言っていた。恋より愛のほうが素晴らしいと、直接言ってはいないけど、はるかに愛のほうが素晴らしいといっていたように思う。
俺と空って、愛はあるのだろうか。まだ、恋の段階じゃないんだろうか。
お互いがお互いに恋して、付き合っているだけ。愛というものはあるのか不安になってくる。
……だめだ。そんな後ろ向きに考えてもだめだ。
「……さてと」
俺は机に向かう。今日言われたことを忘れようと勉強しようと思っている矢先に、母さんが俺を呼んだのだった。
「久太-。お客さん」
「俺に?」
俺はシャープペンシルを置き、階段を下りていく。
玄関を見ると、梵さんたちがいた。
「小鳥遊。汝の住処なかなかよさそうだ。妾気に入ったぞ」
「また偉そうに……。ごめんね。急に来ちゃって」
禊さんが謝ってくる。
な、なんで俺の家知ってるの? 俺教えてないだろこいつらに家の住所。だれか話したのか? 俺の住所知ってるのは空しかいないはずなんだけどな……。
「へえー。結構広い家だね」
「あ、小鳥遊さん。これ、どうぞ」
と、村上さんからコンビニ袋を手渡される。入っていたのはプリンだった。
「甘いもの好きそうだったのでそれにしたんですがどうですか?」
「嬉しいけど……。どうやって俺の家を……」
「やっほー。久太くん」
隠れるように空がいた。
なるほど。空が連れてきたのか。
「ごめんね。吉祥さんが久太くんの家に行ってみたいって」
「気になるじゃん。空ちゃんのようなお金持ちと付き合ってるイケメンの家はさ!」
「空ちゃん?」
「ああ、西園寺さんとか長くていやだから空ちゃんにしたんだけど。空ちゃん嫌?」
「いや、嫌じゃないよ。逆にうれしい」
そうか。
空は神様のように崇拝されていたから空ちゃんと気軽に呼ばれてなかったもんな。ちゃんづけは嬉しいんだろうな。
と、その時、俺の携帯に通知が来る。
『久しぶりに非モテ集団集まるでござる。拙者たち今久太氏の家の近くにいるでござる!』
え、あいつらもくんの?
「久太氏ー。お久しぶり……といいたいでござるが数日前に一度再開しているでござるな」
隆と恭一郎と光が訪ねてきた。
光は今日機械のメンテナンスで仕事が休みになり、暇していたようで、恭一郎は、今日は早く終わることになったからだという。
隆は知らん。
「っと、靴が多いな。誰か来てんのか?」
「大学の友人だよ」
「ほへー。友達も多くなってるんすねえ」
光が感心したようにつぶやいた。
「靴のサイズは全員それほど大きくないな。女子か?」
「そうだよ」
「ハーレム築いてんのかよ」
「ラノベ主人公みたいでござるな」
「俺も、ちょっと思ってる」
たしかに俺の状況はラノベ主人公っぽい。異世界でチートで無双はしてないがハーレム状態に近くなっている。
異世界チーレムなんて俺は好きじゃない! チートなんてくそくらえ!
「とりあえず上がらしてくださいっす。漏らしそう」
「トイレ我慢してんのかよ! 早く行け!」
「悪いっす!」
光は靴を投げ捨て、急いでトイレに向かっていった。
隆と恭一郎も入っていく。リビングにいくと、恭一郎と隆は固まっていた。どうしたんだろうか。
「どうした?」
「……北大ってこんなレベル高い女子がいるのか?」
「い、いや。この人たちが可愛いだけで他は普通だよ」
梵さんたちが可愛いだけで、見た目普通の子も普通にいるしね。
「お前、ほんとラノベ主人公だな」
「拙者たちじゃなかったら一回死ねと思ってるでござるな」
こいつらなかなかひどいと思う。




